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顎関節症(2006年3月14日掲載)

仲宗根 康雄(那覇市立病院)

咀嚼筋がこわばり痛む

症状の原因理解を

顎(がく)関節症をご存じですか? 耳の前で音が鳴る、口が開きにくい、顎(あご)が痛いなどの症状が出る病気です。

わたしたちの顎骨は、上顎骨(じょうがくこつ)と下顎(かがく)骨からできています。上顎骨は頭蓋(ずがい)骨と連続し、単独で動くことはありません。話をしたり、歌ったり、食べ物を取るにはすべて下顎骨が動きます。その下顎骨を動かす役目をするのが、咀嚼(そしゃく)筋です。下顎骨と頭蓋骨のつなぎ目で耳の前に顎関節が位置し、両方の骨の間に関節円板という軟骨があり、クッションの役目をしております。

バランスよく下顎骨が動くときは、何の問題も起きないのです。下顎骨の位置がずれ、それに咀嚼筋の緊張や精神的なストレスが加わって、いろんな症状を起こします。肩こりに似た筋のこわばりが、咀嚼筋に出てきます。関節円板のジャリッとこする音やポキッとたたく音が発生し、症状が進むと痛みを伴います。咀嚼筋の症状がさらに悪化し、関節円板周囲の線維化が進んだり、関節円板が脱落したりすると、口が開きにくくなります。さらに進むと、下顎頭の変形を生じます。

診断は、じかに咀嚼筋を触診し、ときに筋電図を用い、歯牙や顎関節の状態をエックス線検査で見て、関節円板の状態を磁気共鳴画像装置(MRI)検査で調べます。最も大切なことは、自分の顎関節症は何が原因で生じたのか、患者さん自身がよく理解することです。症状は単独ではなく、いろんな要素が大小重なり合って出てきます。それがはっきりすれば、間違いなく良い方向に向きます。

治療は、まず噛(か)む指導を行います。左右交互に、同じ回数で、噛みやすいものを、奥歯で噛むことが基本で、無理に大きく口を開けることをやめ、片噛みしやすい硬い物を避けます。プリンのような軟らかいものでも、噛み合うと、硬いものを噛むときの80%の力が出ます。噛みやすい物で、十分に効果が出ます。痛みが強く、上手に噛めないときはお薬を用い、温熱療法や電気・マッサージ療法を併用し、早めに症状を取ります。

取り外し式の装置(スプリント)を用いることもあります。夜間のみの装着で、十分効果が出ます。装置は歯を削らずに作れます。装置には、症状を早く良くするメリットがあります。このような一般・補綴(ほてつ)的療法に、精神・心身医学的療法を併用し約80―90%程度の人々が治ります。治療費も保険で対応できますので、根気よく通院し、治しましょう。

述べたような治療方法で効果がない場合には、外科的な治療の対象になります。局所麻酔下に関節腔(くう)に注射針を入れ、関節頭の動きをよくする目的で顎関節腔内穿刺(せんし)法、パンピングマニュプレーション、関節腔洗浄療法、そして、全身麻酔下に行う顎関節鏡視下手術、顎関節解放手術、そのほか下顎枝垂直骨切り術等があります。

最近は、早めに診断、治療を受ける方が多くなりましたので、外科的処置を受ける方はほとんど見られません。症状が気になる方は早めに受診し、一般・補綴的な方法で治るように対処しましょう。