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大腸がんの現状と検査(2006年2月28日掲載)

高橋 祐一(高橋クリニック)

良性のポリープが変化

内視鏡の性能・技術向上

まず、はじめに大腸がんで命を落とす方が急速に増加していることを皆さんはご存じでしょうか。

二〇〇四年には大腸がんで亡くなる方は、肺がん、胃がんに次いで第三位となっており、特に女性では胃がんを抜いて死亡原因の第一位となっております。食習慣の欧米化、生活習慣病の増加とあいまって大腸がんも増加しているようです。特に沖縄県では、胃がんより大腸がんが多い傾向があり、注意する必要があります。

次に、特徴として、大腸がんのほとんどが良性のポリープから変化してできることが挙げられます。ポリープは腺腫などと訳され、まあ良性のイボみたいな物と考えてくださって結構です。一般的に胃のポリープのほとんどは特に治療を要しないことが多いのですが、大腸のポリープは別で、特に十ミリ以上のものは将来大腸がんに変化する可能性があることが知られています。

大腸がんの九割程度が大腸ポリープから十―十五年かけてできることが知られています。裏を返すと、大腸がんは良性のポリープからできるわけですから、ポリープ段階のうちに、大腸カメラで切除してしまえば、大腸がんは予防できることになります。

アメリカの各協会などの大腸がんに関してのホームページには、大腸がんは(1)予防可能な(2)治療可能な(3)打ち負かすことができる―病気である、と掲載されています。にもかかわらず、大腸がんで亡くなる方は、減少するどころか、増える一方なのが現状です。これは、大腸がんに関しての知識が普及していないことと、大腸検診・大腸検査の受診率と関係していると思われます。

大腸がんの検査として、検診に組み込まれて一般化しているのが、便潜血検査です。便潜血検査は、大腸ポリープや大腸がんの出血しやすい、といった特徴を利用した検査で、この検査は進行大腸がんの80―90%、早期大腸がんの50%を見つけることができるといわれています。しかし、便潜血検査だけでは進行大腸がんの10%程度、早期大腸がんの50%程度は見逃されることになります。検診で便潜血検査を受ける場合は、このことを理解した上で、検査結果を考える必要があります。

大腸がんの検査で最も精度が高く、ポリープ切除といった治療にも直結している検査が、大腸カメラです。しかし、この検査には、侵襲性・合併症、つまり苦しいとか大腸に傷がつく可能性があるといった問題もからみ、そのまま大腸カメラを大腸検診にお勧めするわけにもいかないのが現状です。

しかしながら、最近はカメラの性能と技術の向上によって、専門家が大腸内視鏡を施行した場合、八―九割の患者さんがほとんど苦痛を感じずに、短時間で検査を終了するといったデータも出ております。特に痛み止めなどを使用せずに大腸カメラを施行して、平均十分程度で検査を終了する施設もあります。

腹部症状があって、特に四十代以上の方は一度、専門の施設で大腸内視鏡などの検査を考えられることをお勧めします。