読者の皆さまはチアノーゼという言葉をご存じでしょうか? 健康な人は口唇や指先、爪(つめ)はピンク色をしていますが、いろいろな病気でこの部位が青紫色(チアノーゼ)になることをいいます。チアノーゼの語源はギリシャ語でdark blue(暗い青色)という意味です。
チアノーゼには二つのタイプがありますが、ひとつは中心性チアノーゼで、血液中の酸素が実際に低下(酸素不足)している状態です。もうひとつは末梢(まっしょう)性チアノーゼといい、血液中の酸素は正常ですが血液循環が悪いため、末梢部(指先)が青紫色に見えることをいいます。寒冷にさらされたり、脱水などで末肖循環が悪い場合では、指先は冷たくチアノーゼが出現しますが血液の酸素は低下しているわけではなく、体の中心部(口腔(こうくう)粘膜)は正常の色をしています。
ではなぜチアノーゼが起こるのでしょうか? 私たちが生きていくために最も必要な酸素は、肺や心臓、血液の働きにより動脈を介して体の隅々まで運ばれます。赤血球にあるヘモグロビンは肺で酸素と結合すると酸化ヘモグロビンとなり、鮮やかな赤色になります。ヘモグロビンが酸素と結合していない状態を還元ヘモグロビンといい、青紫色をしています。
健康な場合、動脈血はほとんど酸化ヘモグロビンですが、還元ヘモグロビンが一定の数値以上(百ミリリットル中3グラム)になると、粘膜からチアノーゼとして見えるわけです。心臓や肺あるいは血液(メトヘモグロビン血症)などの病気により、ヘモグロビンが酸素と十分結合することができない場合にはチアノーゼが起こります。
またチアノーゼはヘモグロビンの量により起こりやすさが異なります。貧血(ヘモグロビンが少ない)では体の酸素が低くてもチアノーゼが現れにくく、逆に多血症では現れやすくなり注意が必要です。最近では在宅酸素療法を行っている方は、パルスオキシメーターという簡単な器具を用い、家庭でも手軽に体の酸素の状態を知ることが可能です。
中心性チアノーゼがある場合、重篤な病気の存在を意味します。先天性心疾患の中でもチアノーゼ性心疾患は、生まれた直後から体の色が青紫色で呼吸や循環状態が悪く、多くは早期に治療することが必要です。ファロー四徴症、完全大血管転位症、複雑心奇形(単心室ほか)などがこれにあたります。チアノーゼを起こすような重篤な肺炎や気管支喘息(ぜんそく)、異物誤飲などの呼吸器疾患では強い呼吸困難があり、救急処置が必要です。
また小児では脱水や他の原因による末梢循環不全の場合、手足が冷たくまだら状になることがあります。簡単な検査法として、指先を圧迫してもすぐに(二秒以内)元の色に戻らず、押した部分がしばらく抜けたまま残る場合では高度の循環不全があります(写真)。このようなときは急いで医療機関で受診することが必要です。
お子さまの状態をチェックするときには全身状態の観察とともに、唇の色や手足に触れ、色や温かさなどにも注意することが大切です。