沖縄県医師会 > 健康の話 > うちなー健康歳時記 > うちなー健康歳時記2006年掲載分 > インスリン抵抗性

インスリン抵抗性(2006年2月14日掲載)

島袋 毅(みなみしまクリニック)

高いホーマアール値に注意

食事、運動療法で改善

インスリンは、体の中で、唯一血糖を下げるホルモンで、膵臓(すいぞう)から分泌されています。そのインスリンの働きが邪魔され、悪くなった状態を、インスリン抵抗性と呼んでいます。インスリン抵抗性は、突然発症する恐ろしい心筋梗塞(こうそく)、脳梗塞などの動脈硬化疾患との関連がいわれています。

簡便なインスリン抵抗性の指標として、血液中の血糖値とインスリン値で算出するホーマアール(HOMA―R)法があります(HOMA―R=血糖値ラインスリン値405 ※数値が2以上はインスリン抵抗性あり)。

私が以前勤務していた病院の二〇〇三年度の人間ドック(約七千人)のHOMA―R値の結果から、いろいろなことが分かってきました。まず、HOMA―R値が高い人ほど、高血圧、高脂血症、2型糖尿病(肥満にともない発症する糖尿病)が起こりやすいことがわかりました。これらは生活習慣病とよばれ、動脈硬化の危険因子です。またHOMA―R値が高いほど、血中の炎症反応の値や、脂肪肝の頻度も上昇していました。

生活習慣病のうち、比較的後期に発症するのは2型糖尿病です。2型糖尿病は、遺伝素因に加え、過食(特に脂肪)、運動不足で発症します。糖尿病にならないように、膵臓は、インスリン抵抗性に対抗して、インスリンを多く出し、がんばって糖を処理し続けますが、ついに力尽きて、糖尿病発症となってしまうと考えられています。広島県でのデータでは、インスリン抵抗性発現から糖尿病発症までの期間は、約十年であったと報告されています。

インスリン抵抗性のある人は、腹部肥満のある人に多く見られました。おへその高さの腹囲が、自分の身長の半分を超えている人は要注意です。実は、インスリンの働きを邪魔している物質の一つは、そのおなかの内臓脂肪から分泌されるTNF―αという物質でした。

ほかにも、さまざまな動脈硬化を引き起こす分泌物(悪玉ホルモン)が、ぱんぱんに膨らんだ内臓脂肪から出ています。現在これらを直接測定するのは難しいので、インスリン抵抗性を調べることにより、動脈硬化惹起(じゃっき)ホルモンが多くないかを予測しています。

インスリン抵抗性を早期に発見し、食事療法、運動療法を始めることは、生活習慣病、特に糖尿病発症予防につながります。人間ドック後の指導をよく理解し、食事、運動に気を使い、翌年のドックで、インスリン抵抗性から脱却できた人々も大勢いらっしゃいました。これらの人たちは、ウエストが細くなり、生活習慣病を遠ざけることに成功し、動脈硬化を反映する血管年齢(PWVという値で判定)も若返っていました。

今日はバレンタインデーですが、食べ過ぎて太らないように注意しましょう。