沖縄県医師会 > 健康の話 > うちなー健康歳時記 > うちなー健康歳時記2006年掲載分 > 鼻内内視鏡下手術

鼻内内視鏡下手術(2006年1月24日掲載)

又吉 重光(県立那覇病院)

歯肉切開せずポリープ切除

合併症なく、快適な生活に

慢性副鼻腔(びくう)炎は鼻づまり(鼻閉)、鼻だれ(鼻漏)等の症状が生じます。以前は細菌による蓄膿(のう)症が多く、膿性鼻漏も症状の一つでした。同じような症状を生じさせる疾患にアレルギー性鼻炎がありますが、耳鼻咽喉(いんこう)科的診察をすれば容易に診断できます。

慢性副鼻腔炎の治療として、鼻漏に対しては内服薬、ネブライザーで加療します。鼻閉に対しては手術となります。慢性副鼻腔炎の鼻閉は鼻茸(はなたけ)(鼻ポリープ)が生じているからです。鼻ポリープは鼻、副鼻腔に長い間炎症が続くと、粘膜が浮腫性に肥厚し、寒天のような固まりが生じます。固まりは薬では簡単には消失してくれません。手術で切除する方が良いのです。

鼻ポリープによる鼻閉を改善するには、鼻腔の鼻ポリープを切除するだけで十分安眠できるようになります。しかし鼻ポリープの予備軍は主に副鼻腔の中にあり、これだけでは数年後に鼻閉が再発してしまいます。そこで副鼻腔解放術が必要となってきます。

副鼻腔解放術、今回のテーマです。近年まで副鼻腔根本術を主体とした手術が行われていました。それは、歯肉部を切開する手術でした。そして上顎(がく)洞の粘膜をすべて除去していました。しかし近年粘膜は必要な範囲は残す方がよいと考えられるようになりました。

近年、鼻内内視鏡下の副鼻腔解放術が副鼻腔炎の手術として行われるようになりました。つまり、歯肉切開をしないということです。そして、内視鏡下とは鼻の孔(あな)から硬性内視鏡を使用することを意味しています。歯肉切開をした場合の問題点は、術後に顔面が腫れることでした。最近の手術では歯肉切開をしないため顔が腫れることはなくなりました。硬性内視鏡を使用しなかった場合の問題点は、手術している個所の詳細が見えにくかったことでした。

鼻内内視鏡下手術の手順として、麻酔は局所麻酔、全身麻酔があり、患者さんの希望で選択しています。手術の内容は鼻ポリープを切除し、それから篩(し)骨洞の解放、前頭洞管の解放、上顎洞自然孔の解放をします。蝶形(ちょうけい)骨洞は必要に応じて行います。

篩骨洞を中心に、その近辺に眼球、そして脳があります。境界となる骨の厚さは薄く、まれに合併症が生じることがあります。そのような合併症を防ぐためにも内視鏡でのモニター画面が重要な役目を果たしてくれます。合併症はそう簡単には起こりません。

手術を行った多くの患者さんはよく眠れるようになった、胸いっぱい空気が吸えるようになった、においをかぐことができるようになった―と言っています。中には、まれではありますが、高血圧の患者さんで血圧が改善したと話してくれた人もいます。

鼻閉、鼻漏がもたらす患者さんの症状は、本人には相当つらいものがあることを知っています。術後は快適な生活を楽しめます。鼻茸を持っている人はぜひとも鼻内内視鏡下の副鼻腔解放術を受けるようにお勧めいたします。