肩の痛みは、肩を動かしたときに痛みを感じる「動作時痛」と、じっと肩を動かさないでいる時に痛みを感じる「安静時痛」とがあります。肩の安静時痛は、寝る時に起こることが多くみられます。痛みのある肩を下にすると肩が痛くて眠ることができなかったり、寝返りをうった時に痛くて目を覚ましてしまったりすることで、睡眠障害までも招いてしまう場合があります。
では、どうして肩が痛くなるのでしょうか。肩は他の関節に比べいろいろな方向に広く動かすことができますが、一方で脱臼しやすい構造になっています。そのため、肩の周りには筋肉やすじ(腱板(けんばん)や靱帯(じんたい))が多く存在し、これらがうまくバランスをとっているのです。
ところが、肩に力が頻繁に加えられたり、力が急にかかったりすると筋肉やすじが傷ついてしまいます。特に、中年以降で、すじが硬くなっていたり弱くなっていたりすると、肩を痛めやすくなります。
また、肩の骨に変形(骨棘(こつきょく))が生じ、それが肩を動かすときにすじにぶつかり、傷つけてしまうこともあります。
このすじが傷つくと肩に痛みを感じます。特にすじが切れてしまうと、筋肉がやせて力が入りづらくなり、うまく肩を動かしにくくなります。このため、すじが切れた場合には手術が必要になることもあります。
手術ですじが修復されると、痛みが軽くなり肩を動かしやすくなります。最近では、「肩関節鏡術」といって小さな傷で手術を行うことも可能となっています。
実際に四十歳以上で肩に痛みがある人の中で、整形外科を受診する人は20%程度と少ないのが現状です。特に四十歳・五十歳代の受診率は低いと報告されています。
この受診率が低い原因は、第一に、肩の痛みがあっても我慢できる程度のものが多いためであろうと思われます。
第二に、肩の動きが悪くなったとしてもある程度ひじや手が使えること、もう片方の肩が動くことで日常生活にあまり支障をきたしていないためであろうと思われます。
しかし、肩のすじの傷つき具合と肩の痛みの程度は比例しないため、放置される場合があります。
そして、痛みのために長い間肩を動かさないでいると、肩が硬くなってしまい(拘縮)、治療が難しくなります。
また、一方で肩の痛みは、首のヘルニアなど肩以外の原因で起こることもありますので、早めに肩の痛みに対し適切な診断を行うことが大切です。肩の痛みがあって、それが我慢できる場合でも、どうぞ遠慮なさらず早めに整形外科にご相談ください。