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閉経後骨粗鬆症の薬物治療(2005年10月25日掲載)

石川 邦夫(石川産婦人科)

女性ホルモン欠乏が原因

多種多様な薬に理解を

最近の報告では、日本人女性の平均寿命は八五・五九歳と世界一の長寿です。そのため、いかに健やかに老後を送れるかが問題になっています。

これに大いに関与してくるのが女性ホルモンです。女性ホルモンは女性のいろいろな機能をコントロールしています。特に閉経以降、女性ホルモン欠乏により、肩こり、いらいら、不眠、発汗などの更年期症状を発症し、また、皮膚の乾燥、老人性膣(ちつ)炎、コレステロール値の上昇、骨粗鬆(しょう)症等いろいろな症状も引き起こします。

骨粗鬆症は、骨の量が減り、もろくなって、骨折しやすくなる病気です。人の骨は骨を形成する細胞と、骨を壊す細胞によって新陳代謝を繰り返します。女性ホルモンが欠乏すると、このバランスが崩れ、骨が減少し、骨折しやすくなるのです。「国民衛生の動向」二〇〇一年版によると、寝たきりの原因は、脳血管障害が39%と最も多く、骨粗鬆症、骨折が18%と次いでいます。寝たきりでは健やかな老後は迎えられません。

骨粗鬆症の治療薬には、(1)カルシウム製剤と十分な栄養と日の光を浴び適度な運動をすることです。

(2)カルシトニン製剤は骨吸収抑制作用があり、注射で投与が可能です。

(3)イブリフラボン製剤は植物エストロゲンで骨吸収抑制、骨形成促進作用がありますが、効果が弱いので、他剤と併用することが多いです。

(4)ビスフォスフォネト製剤は骨吸収抑制作用が強力ですが、消化器症状のため、内服中止となることがあります。

(5)ビタミンD3製剤も骨吸収抑制、骨形成促進がありますが、これも併用することが多いです。

(6)ビタミンK2製剤は骨形成作用があります。

(7)漢方製剤は骨粗鬆症に保険適応はありませんが、補腎(ほじん)、健脾(けんぴ)、駆■血(くおけつ)等の適応で、カルシウム、ビタミンD3等と併用しています。

(8)エストロゲン製剤はホルモン補充療法で婦人科の得意とするところです。エストロゲンは骨にある受容体に結合することによって骨の破壊を抑制します。

その効果は他剤に比べ群を抜いていますが、長期使用で乳がんに若干罹患(りかん)しやすくなるといわれています。

最近エストロゲンと同じように受容体に結合して骨の破壊を抑える(9)ラロキシフェン製剤が出現しました。これは乳がん、子宮内膜がんの発生を低下させることもわかっています。エストロゲン製剤に代わる薬といってよいでしょう。ただラロキシフェンはエストロゲンと違い、ホルモン作用は無く、更年期症状を悪化させる可能性があります。更年期症状のある人には向いていません。さらに女性ホルモンが十分にある閉経前の患者さんや男性にも使用できません。

骨粗鬆症は極端に寿命を縮めるような病気ではなく、骨折を起こしやすくなることが怖い病気です。元気に動き回れてこそ生きがいも生まれます。骨粗鬆症は生きがいを損なう病気と考えてよいでしょう。気長な予防と治療が必要だと思われます。