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内視鏡使った治療(2005年10月18日掲載)

亀山 眞一郎(浦添総合病院)

手術との混同に注意

正しい知識で方法選択を

大腸がんの患者さんに腹腔(ふくくう)鏡下手術の説明を行っていた時のことです。「大腸ポリープの内視鏡手術で腸に穴が開いて亡くなった方の記事を新聞で読んだことがあるのでとても心配です」とおっしゃっていました。

近年、内視鏡を使った治療法について、その有用性や事故の話などをテレビや新聞・雑誌などで目にすることが多くなっています。しかし、これらのニュースや記事を見ていると、内視鏡手術と内視鏡治療とが混同されているように見受けられます。

一般的に、内視鏡手術とは体に開けた小さな穴に内視鏡を挿入して体の中を観察しながら、他の穴から挿入した鉗子(かんし)という道具を使って手術を行う方法を言います。胸の中の手術は胸腔(きょうくう)鏡下手術、おなかの中の手術は腹腔鏡下手術と呼ばれています。

ほかにも甲状腺や関節内の手術など多くの手術があります。これらをまとめて鏡視下手術あるいは内視鏡下手術と呼ぶこともあります。体を切り開いて実際に目で見ながら行う、すなわち直視下に行う手術に対して鏡視下あるいは内視鏡下と呼んでいるわけです。

一方、内視鏡治療はいわゆる胃カメラや大腸カメラを使った治療のことを言います。代表的なものに早期胃がんや大腸がんに行われるポリープ切除術や内視鏡的粘膜切除術があります。

昔は先端にレンズとフィルムを備えた「カメラ」を装着したものを使っていたので胃カメラなどと呼ばれましたが、その後はファイバースコープ、電子スコープというように進化して現在では胃内視鏡や大腸内視鏡などと呼ぶようになっています。したがって、これらの「カメラ」による治療を内視鏡治療と呼ぶわけです。

内視鏡治療にはほかにも、狭くなった腸管を拡(ひろ)げる拡張術やステント挿入術、胆管の石を取り除くための内視鏡的乳頭切開術や内視鏡的乳頭バルーン拡張術、食道静脈瘤(りゅう)に対する内視鏡的硬化療法や静脈瘤結紮(けっさつ)術など、これも多くの治療があります。

いずれも「内視鏡」という名前の道具を使って「手術」や「治療」を行う方法なので違いがわかりにくいのだと思います。しかし、内視鏡手術では体の中を見るためだけに内視鏡を使うのですが、内視鏡治療では内視鏡の操作そのものが治療の成否にかかわるという点で大きく異なります。

最初にお話しした患者さんは、大腸ポリープの「内視鏡治療」の記事を読んで、大腸がんの「内視鏡手術」に対して不安を持っていたわけですが、両者は危険性や合併症の内容が全く違います。

どのような治療法にもリスクはありますが、それぞれの治療法の利点とリスクを吟味して最も適切な治療法を選択することが大切です。これらの用語と同じようにわかりにくい点も多いと思いますので、主治医とよく相談して治療方法を決めるようにしましょう。