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「見ると診る」(2005年10月11日掲載)

高宮城 敦(高宮城皮フ科)

熟練要する皮膚科の視診

検査は必要なときに

先日マンゴーの木を切ったあとに体と手足がかぶれた患者さんがいらっしゃいました。症状と経過から典型的なマンゴーによる接触皮膚炎と診断しました。この方は過去にも同じようにかぶれた経験があるとのことで、本人もそれについては納得していました。治療で使うステロイド外用剤について納得いただけなかったせいか、帰りしな「皮膚科は組織検査とかいろいろ検査はしないんですか」とかなり不満げでした。

これと同じように皮膚科の日常診療ではよく「あの病院では見るだけで何もしないから」とか「見るだけでもう終わりですか」とかいう声をよく聞きます。患者さん側からすれば確かに不安なんだと思います。しかしわれわれ皮膚科医にとって視診(見るではなく診る)は非常に重要な診断ポイントなんです。

「皮膚は内臓を表す鏡」というように内臓疾患や他の病気と関係した皮膚症状も多く、非常に複雑です。皮膚科医が皮膚症状を診ることができるようになるまで最低十年以上の訓練が必要だと教えられてきました。放射線科医がエックス線写真を読影するように、われわれ皮膚科医は、問診で得られた情報をもとに皮膚の異常状態を診て分析しているのです。いろいろな皮膚症状で調べたその組織状態を組織検討会などを通して何千、何万回と分析して訓練してきたわけです。

エックス線写真を専門の放射線科医や内科の先生でないと詳細に判断できないのと同じように、皮膚科医が皮膚の状態を診てさわる(触診)のは他科の医師が診るのと全く違うし、ましてや素人の患者さんが見るのとは天地の差があります。こういった皮膚症状の場合こういった可能性があるとか、訓練によって培われた膨大なデータに照らし合わせて診ているのであります。簡単な検査でもお金がかかり患者さんに負担がかかるわけですから、必要なければやらない方がいいわけです。

もちろん検査が必要である場合も多く、いろいろな検査が診断あるいは経過をみていく上で重要な手助けとなるのも事実です。真菌(水虫などのカビ)や細菌あるいはウイルスによって変性した細胞を検出する顕微鏡検査、細菌の同定やどの薬がよく効くかを調べる培養検査、皮膚組織を採取してがん細胞の有無などを調べる皮膚組織検査、アレルギーを調べるスクラッチテスト、パッチテスト、その他血液検査やエックス線などの画像検査等があります。

そういった検査は状況に応じ必要があるときに行うのは当然であります。虫さされ、かぶれなど明らかな場合は行いません。しかし初めは一見虫さされ様に見えても、別の皮膚病のこともあります。塗り薬などで良くなっていく様子がない場合に検査を進めていくといったケースもあります。検査をしないから良く診てくれていないといった誤解をせず、疑問に思ったら診てもらっている先生に何でも相談してください。