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包括的呼吸リハビリ(2005年9月27日掲載)

久場 睦夫(国立病院機構沖縄病院)

多い慢性閉塞性肺疾患

息切れ改善に運動療法

最近、階段を上る時、風呂へ入る時に息切れを感じる。布団の上げ下げや荷物を運ぶ時息が切れてスムーズにできない。あるいは散歩やゴルフ中、息が切れて仲間に遅れがちになる。コーラス好きの方では他のメンバーに比べ歌がうまく続かない。

こういった息切れのため、これまで不自由なく行ってきた活動が億劫(おっくう)になり、動きたくない。家に引きこもり、外出しなくなる。このため足や腕に力がなくなり、動きがつらく感じる。息切れが生じると、こういった悪循環をおこし、ますます作業時の呼吸困難が強くなっていく。こういった息切れで日常生活に支障をきたしている方が年々増えてきています。

息切れの原因はいろいろありますが、最も多いのは肺気腫や慢性気管支炎を含む「慢性閉塞(へいそく)性肺疾患」です。この病態は、呼吸時の吸いこみや吐き出しに支障を生じるため、さまざまな動きや作業に見合った酸素の吸入がうまくいかず呼吸困難となるのです。

さて治療ですが、呼吸の吸いこみや呼出(こしゅつ)をスムーズにするために気管支拡張剤、痰(たん)の喀(かく)出を促す溶解剤、感染併発時の抗生剤等と、それに息切れに対しては「包括的呼吸リハビリテーション」が重要です。「包括的呼吸リハビリテーション」とは、呼吸困難を軽減し運動力の改善、生活の質の改善、日常活動度の向上を図るものです。

これを始めるにあたっては、呼吸困難感の具合、肺機能などを調べ、呼吸機能障害の程度を把握します。それにより、個々に合ったリハビリテーションの計画を立てます。

リハビリテーションの中心は、運動療法ですが、これをうまく行うために、まず呼吸訓練が必要です。これは、口すぼめ呼吸と腹式呼吸が基本です。この呼吸法を用い運動療法、さらには日常生活を効率よく行います。

運動療法は、下肢筋力のトレーニングが主体となります。その方法には平地歩行、階段昇降、自転車エルゴメーター、トレッドミル等があります。このうち平地歩行は誰でもどこでも実施でき、リハビリの導入のみならずその後のトレーニング継続に大変有用です。この下肢筋力のアップと併せ、上肢筋のトレーニングを加えることで全身的に筋力がアップし、日常生活や運動時の呼吸困難感を軽減させます。また器具を用いた呼吸筋トレーニングも有用です。

リハビリテーションの主体はこの運動療法ですが、呼吸機能低下による日常生活障害をさらに効率よく克服するために、呼吸困難をおこしている疾患を理解する事と、必要なエネルギー量や適正体重の維持のための栄養摂取法、吸入薬等の服薬法、禁煙法などの習熟も重要です。このため、このリハビリテーションは、医師、看護師、理学療法士のみならず、薬剤師、栄養士等が参加し、それぞれの専門家が患者さんを指導し、チームとして患者さんを支えます。

息切れでお悩みの方はこの「包括的呼吸リハビリテーション」へぜひ参加され、呼吸困難感を軽減し、よりよい日常生活をおくって頂きたいと思います。