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まだまだ怖い気管支喘息(2005年9月20日掲載)

当間 将盛(琉生病院)

効果的な吸入ステロイド

気道の慢性的炎症を抑制

わが国の喘息(ぜんそく)死亡数は、年間約六千―七千人。患者数は増加しており、十五年前の約二倍だ。(人口の3―5%)

これだけ治療法が進歩しているのに、なかなか死亡数が減らないのは(1)吸入ステロイドの使用が十分でないこと(2)ピークフローメーターをはじめとした日ごろの喘息管理がきめ細かくないこと―だ。今回は、吸入ステロイドの重要性に絞って述べる。

喘息治療の基本は、言うまでもなく喘息死亡のリスクを限りなくゼロに近づけ、発作で入院することなく、患者が日常・社会生活を滞りなく遂行できるようなコントロールを目指すことである。さらに、肺機能を限りなく正常に回復させ、気道リモデリング(炎症や発作を繰り返し起こしていくうちに気管支壁が厚く、固くなる変化のことをいう)の進展を防ぐことが求められる。

喘息は、肺への空気の通り道である気道が「慢性の炎症」を起こし、狭くなって発症し、呼吸困難が起こる。これは、わずか十数年前に分かった画期的な事実だ。

この炎症を抑えるのに最も効果的なのが、吸入ステロイドだ。しかし、普及率は12%でしかない。その原因は、副作用の不安があるからだ。確かに、ステロイドは内服等の全身投与では、いろいろな副作用がある。しかし、吸入薬は、使用量が数百分の一と少量ですむ。その効果を挙げる。

(1)喘息死亡を減少させる(吸入ステロイド普及のため、二〇〇〇年より少しずつ死亡数が減少している)。入院の回数・入院の日数を減らす。(私が、医者になった約三十年前に比べ大幅に減少した。現在は、中等症でも一―二週間で退院できる)

(2)症状重症化を防ぐ。(重症喘息が軽症となり、救急外来に来なくてすむ患者が吸入ステロイドの使用で増加。約三十年前は、救急患者の五割は喘息というくらい多かった)

(3)喘息は気道リモデリングを起こし慢性化・重症化していく。これを防ぐため、軽症の内に封じ込め、気道の炎症の慢性化が起こらないようにする。比較的早期で症状の軽い喘息の人への早期治療開始が重要である。

しかし、現実は発作を抑えると安心し、喘息の根本治療がなされていない患者がとても多い。残念でならない。吸入ステロイドを使わないと炎症が静かに進行していく。

喘息は、そもそも治らない病気なのか。いや、成人喘息の20%は、治りうる。その証拠の一つは「五―六年以上の観察で、三年以上発作を認めない治癒ないし寛解は20%」との報告が多いこと。

第二に、厚労省の調査で「二十―九十歳代」まで新しい患者が発生している事実がある。その人たちが治らなければ、年代が高くなるにつれ右肩上がりに患者数が増えるはずだ。しかし、現実には、四十五―五十四歳での患者数はむしろ減少している。これは、治っている患者がいる証拠だ。喘息を初期のうちに吸入ステロイドで治そう。あるいは、慢性化している人は、吸入ステロイドで重症化を防ごう。