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のどの痛み(2005年7月19日掲載)

仲本昌一(仲本内科)

扁桃炎は抗生剤治療で

「疑い例」には迅速キットも

わたしは四年ほど前から開業していますが、日常診療で毎日のように「のどが痛い」患者さんを診て、この問題に挑んでいます。医者の悩みが一般のわれわれ(読者)に分かるわけない、と思わないでください。それを理解してもらうと医者―患者関係が良くなり、治療もうまくいくのです。

皆さまは、朝、目を覚まし、のどが痛く、体がいつもよりだるく、熱感があり、くしゃみ、鼻水が出ると「かぜ(普通感冒)かな」と思われるのではないでしょうか。

また、いつもとは違い高い熱が持続し「のどの痛み」も強く、食事をのみ込むときに痛いので病院へ行くと、扁桃腺(へんとうせん)が腫れているので「急性扁桃炎」と言われ、抗生物質を服用して、良くなった経験がおありだと思います。

このような典型例ばかりだと悩まずに済むのですが、実際はもっと症状や所見が複雑に絡み合っているのが現実です。なぜ医者はこの両者を分けたがるのでしょうか。

かぜはウイルスが原因なので、抗生物質は効きません。しかしながら解熱剤を服用しながら安静にして経過を見ていると自然回復します。

一方、急性扁桃炎は多くの場合、溶連菌という細菌が原因で、抗生剤が効きます。解熱剤だけで様子をみると発熱や「のどの痛み」は続きますし、濃厚接触者にうつります。周囲に膿(うみ)をつくったり、リウマチ熱や急性腎炎などの合併症を起こします。抗生剤で治療すると、リウマチ熱の併発を防ぎ、扁桃周囲への炎症の拡大を防ぎ、症状が緩和され、濃厚接触者への広がりも防ぐことができます。

従って「かぜ」などのウイルスによる病気には無用な抗生剤を使わずに、乱用による耐性菌をつくらず、溶連菌咽頭(いんとう)・扁桃炎に対して適切に抗生剤を使いたいのです。

それには、(1)滲(しん)出性扁桃炎(2)圧痛を伴う前頸(けい)部リンパ節腫脹(しゅちょう)(3)発熱(4)咳嗽(がいそう)がない―の四つのうち、すべて当てはまるものは、典型例として検査なしに治療し、二つか三つ当てはまる場合には疑い例として、迅速キットで診断します。一つ以下の場合は、その可能性は低いのです。

扁桃炎を分かりやすく図で説明します。口を開くと上顎(あご)の奥の方の、のどちんこ(口蓋垂(こうがいすい))の付け根の両側にあるかたまりが(口蓋)扁桃です(一般に扁桃腺と言われていますが、医学用語では『腺』は付けずに扁桃と呼びます)。

この扁桃は、咽頭の粘膜内で発達した一つのリンパ組織で、外部から侵入してくる病原体に対して防御の役割を果たしていますので、よく炎症し赤く腫れ上がり、膿や白苔(はくたい)が付くのです。読者の皆さまも、口を開けて鏡で確認してみてください。

最後に、今回伝えたかったことは、(1)かぜには抗生剤は効かないこと(2)物をのみ込む時に痛む場合は重症であること(3)急性扁桃炎では高熱が続くこと(4)口を開けて鏡で自分の扁桃を見られること(5)溶連菌咽頭・扁桃炎の疑い例には迅速キットがあること―の以上です。