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胃がん発生の危険因子(2005年7月12日掲載)

上里忠興(泉崎病院)

ピロリ菌が大きく関与

高塩分食、喫煙なども原因に

どうして胃がんになるのですか? 患者さんに胃がんだと説明すると、多くの方がそう質問してきます。胃がんは最近減少傾向にあるものの、日本や東南アジアで多く発生します。日本の中でも東北地方に多く、以前は、保存食としての漬物に含まれる塩分が原因ではないかと考えられていました。

十数年ほど前から、胃に感染する細菌が見つかり、ヘリコバクター・ピロリ菌と命名されましたが、最近ではこのピロリ菌が胃がん発生に大きくかかわっていると考えられるようになっています。

ピロリ菌感染率は四十代以上では70%と高く、若い年代では30%以下と低くなっており、以前、公衆衛生が悪いころの井戸水などからうつったのであろうというのが定説となっています。

この菌が胃に感染し胃を荒らすと胃かいようや、十二指腸かいよう、萎(い)縮性胃炎(慢性胃炎)などが発生します。荒れた胃にはがんが発生しやすくなるのです。

その他、胃がん発生のリスクファクター(危険因子)としては、最初に述べた高塩分食以外に、唐辛子、喫煙、アルコール、高でんぷん食、焼き肉、焼き魚などが考えられています。

逆に抑制因子としては野菜、果物、ビタミンC、緑茶などが挙げられています。食事はバランス良く取るのが大切です。

ところで、すべての保菌者が胃がんになるのではなく、ピロリ菌保菌者で約千二百人の方を八年間追跡調査したところ、およそ3%に胃がんの発生がみられたという報告もあります。この数値を高いと考えるのか、あるいは低いと考えるのかは個人個人で受け取り方はいろいろだと思います。ただし、若年者の胃がん発生にはかなり深く関与しているようです。

これを読まれて不安になった方は、消化器専門の病院に行けば、簡単に感染の有無をチェックすることや、胃の荒れ具合を見てもらうことが可能です。

ピロリ菌以外にEBウイルス感染(ウイルスの一種。小児期に感染しやすくあまりひどい症状は出ないが、成人では高熱を引き起こす)も、胃がん発生に関与しているという報告もありますが、まだはっきりしていません。

ところでピロリ菌に感染している場合の治療は、抗生剤や酸分泌抑制剤を一週間内服するだけで90%の方が治癒します。胃に発生する特殊なタイプのリンパ腫も、除菌で治癒する場合がしばしば見られます。

一方、がんが発生した場合の治療はその進行時期により大きく異なります。がんの組織型でも異なりますが、一般的にはかなり早期であれば、内視鏡で切除することが可能です。しかしながら、進行した例では、従来どおりの開腹手術が必要になります。ただし、最近では腹腔(ふくくう)鏡補助下手術と言い、おなかの中にカメラを入れ細い手術器具で行うこともあり、比較的小さな傷で済む場合もあります。

以上、簡単に胃がんのリスクファクターと治療法を説明しましたが、何より大切なのは、四十歳以上の方は、定期的に胃カメラの検査を受け、早期発見、早期治療を心がけることです。