糖尿病や高血圧、たばこなどは動脈硬化の原因になるといわれていますが、動脈硬化の症状はさまざまです。心臓の動脈が狭くなるのを「狭心症」というのは聞いたことがあると思います。しかし、動脈は心臓だけではなく体中に張り巡らされていて、どこからでも動脈硬化が生じる可能性があります。血管が詰まったり、ものすごく細くなったりすると、そこから先に十分な血液が行き渡らなくなり症状が出現することになります。足の動脈が細くなると、足先のしびれや歩行時の痛みが出現するようになります。腕の動脈(鎖骨下動脈)が狭くなると、腕を上げたときや重い物を持ったときに、だるさや意識が遠のく感じが出現します。
「末梢動脈閉塞(そく)・狭窄(さく)症」の治療には(1)薬物療法(2)手術療法(バイパス手術)(3)風船治療(PTA)がありますが、このうち、体の負担が少なく効果も上がっている風船治療についてご紹介したいと思います。
最近では、心臓の直径三ミリぐらいの血管を風船で内側から広げ、ステントというコイル状の金網を挿入することで、狭心症や心筋梗塞(こうそく)の治療を行うことが一般化しています。しかし、意外と末梢血管(腸骨動脈、浅大腿動脈、腎動脈、鎖骨下動脈など)に対する治療は普及していないのが日本の現状です。これは、末梢血管に対する専門知識と技術を併せ持つ医者が育っていないのも原因ですが、一つには症状と病気が理解されにくく、血管の病気なのに足が痛いとのことで整形外科などを受診されている方も多いようです。
そこで、典型的な症状をご紹介します。
まず、足の場合。歩き続けると足が冷たくなって痛みが出るなどの症状。
次に手の場合。手作業(包丁とぎや鎌での草刈りなど)をするとすぐだるくなる。または手作業や首の向きなどで気が遠くなったり失神する(手作業で失神するというのは、イメージがわかないかもしれませんが、これは腕にいく血管と脳にいく血管がつながっているためです)。
腎臓の場合。高血圧、血液検査での腎機能低下など(自覚症状がないことが多い)。
これらの症状がある場合は、専門病院で四肢の血圧を測る道具により外来で簡単に診断ができます。最近では、血圧の左右差や血流の波形の測定で診断を付けるようにしており、これにより原因となっている場所もある程度特定できます。また、血管以外の病気(骨や筋など)の場合も同様の症状になることがありますので、その場合も結果はすぐにお知らせするようにしております。
風船治療は三十分から一時間の治療です。麻酔は局所麻酔で行うことができ、途中症状などもお話ししながら行えますので、痛み止めの追加なども遠慮なくおっしゃっていただけます。また、中には風船治療では難しく、バイパス手術が有効な方もおられますので、相談の上で決定するようにしております。これらの症状のある方は一度ご相談ください。