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子どものお薬抗生物質(2005年6月14日掲載)

上原弘行(うえはら小児科医院)

細菌性の感染症に効果

適切な投与と服用を

病院を受診するお子さんの症状で最も多いのは、何といっても、発熱、咳(せき)、鼻水といった、感染による呼吸器症状でしょう。かぜ(感冒)、咽頭(いんとう)炎、扁桃(へんとう)炎、中耳炎、気管支炎といった診断の下、お薬を処方されることがあると思いますが、抗生物質はどれくらいの割合で処方されているでしょうか。果たして皆さんは処方された抗生物質をきちんとお子さんに飲ませているでしょうか。今回はお薬の中でも特に抗生物質について考えてみたいと思います。

感染症の病原体としては、主に細菌とウイルスがあります。子どもの場合、その原因のほとんどがウイルス感染なので、ご存じかと思いますが抗生物質は効果がありません。従って抗生物質は不要です。感染の原因がはっきり細菌感染と分かれば抗生物質の適応になりますが、症状だけではなかなかウイルス感染と細菌感染の区別が困難な場合があります。そこでわたしたちは、診察所見を基に熱の高さや症状の程度、全身状態などから総合的に判断し、場合によっては血液検査を行い、適切な抗生物質を選択し、処方します。

参考までに、三九度以上の発熱の場合には細菌感染の率が高くなるといわれています。抗生物質が有効な典型例は溶連菌による咽頭・扁桃炎です。のどの所見から比較的容易に診断が可能(迅速検査もあります)で、治療により速やかに解熱します。しかし、治療と同時に合併症である腎炎やリウマチ熱の予防のため、熱が下がっても指示された期間は内服を続けるという注意が必要です。

現在、一番治療で困っているのは子どもの中耳炎ではないでしょうか。中耳炎といっても細菌性ばかりではなく、ウイルス性や滲出(しんしゅつ)性中耳炎もありますが、日本ではこれまで抗生物質の使用頻度が高く、細菌性中耳炎の場合、抗生物質が効かなくなった耐性菌の増加を招いて問題となっています。これは抗生物質の使いすぎと同時にその飲ませ方にも問題がある場合があります。

家族からお話を伺うと、意外と一日三回必要なお薬を一日二回に減らしたり、熱が下がるとすぐに中断したりといったことがあり、不適切な服用の仕方が原因の一つとも考えられます。抗生物質は必要十分量が病巣部で作用してその効力を発揮します。中途半端な飲み方では血中濃度が上がらず、治療効果がないばかりか、かえって耐性菌の増殖を招いてしまいます。従って、服用するなら決められた用法、用量を守ることも大切なことです。

今後、抗生物質を使用するにあたって大切なことは、わたしたち医療者側は不必要な抗生物質は投与しないこと、必要なら最も適切な抗生物質を選択し、用法や用量、期間まで十分説明し、理解してもらうこと。また家族の方は治療薬の内容や必要性を理解した上で、用法や用量を守り、確実に服用して、互いにその効果を適切に評価していくことではないでしょうか。