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大腸内視鏡(2005年5月24日掲載)

樋口大介(国立病院機構沖縄病院)

痛まない操作可能に

検査受けて早期発見を

日本ではもともと大腸がんは欧米と比べると少ないのですが、近年は確実に増加しています。食生活が欧米化して、野菜を十分に取らなくなり、肉類(獣肉)をたくさん食べるようになってきたからだと考えられています。肥満やアルコール摂取も大腸がんのリスクを上げていると言われています。

厚生労働省がん研究助成金による「地域がん登録」研究班のデータでは一九七五年から九九年までの日本のがん患者数では結腸がんの増加が著しく、男で八・一倍、女で五・七倍でした。女性は九七年からすでに大腸がん(結腸がんと直腸がん)の年間患者数は第一位となっており、二〇一五年には男性でも大腸がんが胃がんを抜いてトップになると予測されています。

大腸がんは早期のうちは症状が全くないことが多く、出血、便秘、腹痛などの症状が出たときは進行がんになっていると考えられます。進行がんでも、手術で助かる可能性は十分にありますが、早期がんのうちで病変が小さく、浅いものなら手術しなくても内視鏡的に切除できます。

大腸がん検診として便潜血反応があり有用ですが、進行がんの患者ではこれが九割程度陽性になります。しかし陽性だからといってすべてがんではありません。陽性の人の中でがんが見つかるのは数%だけです。ほとんどは痔(じ)など他の原因と考えられます。また陰性だからといって手放しで安心はできません。早期がんでは出血はしにくいと考えられています。

日本人が大腸がんにかかるのは六十歳がピークといわれています。それまで一回も大腸検査を受けていない人は、たとえ便潜血が陰性であっても、大腸内視鏡検査か注腸造影検査(バリウムを使用)を受けるほうが良いと思います。最近は大腸内視鏡が細く、柔らかくなり操作性も向上し、患者に著しい苦痛を与えずに操作できる内視鏡医も増えています。

また注腸検査では異常なければ良いのですが、異常が疑われると診断確定のため大腸内視鏡をまた受けなければなりません。腹部症状や貧血がある場合はもちろん、無症状でも五十―六十歳になったら大腸内視鏡検査を一度受けてみることをお勧めします。

大腸内視鏡検査には途中まで(S状結腸)まで観察する短いものと、奥(盲腸)まで見るものがあります。短いものがなされる理由は大腸がんがS状結腸と直腸にできやすいからです。

検査をやるならとことん奥まで観察してもらって、しかも一回で白黒はっきりさせてほしいという人には全大腸内視鏡検査(トータルコロノスコピー)がお勧めです。ただし一般に検査当日に二リットルの特別な下剤を飲み干さなければなりませんので、全身状態が悪かったり、腸が詰まっておなかがパンパンに張っていたりする方にはできない検査です。

また腹部の手術を受けたことのある方は大腸に癒着がある場合があり、内視鏡がうまく入らないことがあるので主治医の判断で注腸造影検査が選択される場合があります。