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日常にひそむこころの病(2005年5月17日掲載)

安部康之(天久台病院)

気をつけたい精神科疾患

快食・快眠・快便な毎日を

みなさんは、快食・快眠・快便な毎日を送っていますか。食事・睡眠・便通が生きる上での基本というのは世界に共通する価値観です。心身ともに健やかでなければ、これら三つの快は保てません。逆に三つの快を意識することで、体だけではなく、心の健康状態もチェックできるのです。

まず快食。食欲がなかったり、砂をかむような感じを覚えたりしませんか。胃腸の病気で長く通院しているのに良くならないなんてことは。ストレスや悩みごとが原因となる心身の病気(神経症、心身症)や、うつ病かもしれません。快食だと言って食べ過ぎるのも問題です。ストレス食いや摂食障害(過食、拒食)、ましてや生活習慣病を引き起こしてしまうからです。

次に快眠。眠れないのはつらい。不眠はあらゆる病気のサインです。一番気をつけないといけないのが、うつ病。快眠できず朝は布団から抜け出せず、何をするのもおっくう。この世から消えてしまいたい。自殺の危険です。

晩酌しないと寝つけないのはアルコール依存症かも。アルコール無しで眠れるか試してみてください。アルコール依存性不眠と呼ぶほど多い不眠症ですから。

夜中に訳のわからないことを言ったり徘徊(はいかい)をはじめたりするお年寄りがいます。これは認知症(病的なもの忘れ)で起こる夜間せん妄という意識障害です。もの忘れが一〜二年で悪化する場合も認知症。ブツブツ独り言、その場に合わない笑いを見せる青年は統合失調症。幻聴や妄想があるからです。

しかしもっと気をつけたいのはこんなことです。沖縄は夜型社会なので昼夜逆転した生活に甘いという現実があります。深夜のスーパーや居酒屋で小さなお子さんを見かけたことはありませんか。

原始の時代から近代まで、人は日の出とともに目覚め、日没の数時間後に眠るという体内時計(概日リズム)を維持してきました。明るい夜なんてのは電気を発明してからの百年だけです。この体内時計を幼いころから狂わされたら将来どうなるのでしょう。キレやすい、引きこもり、発達障害や行動障害など、社会に大きな影響を及ぼすかもしれません。

暗い話になったので、最後は快便で。毎日必ず出なくてもいいのですが、やはり快便したときの爽快(そうかい)感は格別。便秘が続いたりお腹(なか)が下ったりの場合は、ストレス、運動不足、睡眠、酒、たばこ、食事や間食など生活習慣の見直しが必要です。

このように、三つの快は良い三角関係を保ちながら、体と心を管理してくれます。どれかが欠けたと感じるときは心療内科や精神科を受診しましょう。精神科は怖くなんてないですよ。

さて、かく言う私はどうでしょうか。快眠快便は時々。朝は食欲なし。でも時々あれば上等。「…できない」という自分の不調ばかりに目を向けるとシンドイので、「…できる」を探すよう自分に都合よく考えています。人生つらいことがあっても快眠・快食・快便、どれかあれば上等!とみなさんが思えるといいですね。