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子供の中耳炎(2005年3月22日掲載)

茶園 篤男(茶園耳鼻科)

薬効かない細菌が増加

鼻の通りが治療の鍵

急性中耳炎は子供に多い病気で、三歳までに50―70%の子供が一度はかかるといわれています。特に抵抗力が最も弱い生後六カ月から二歳までの乳児期に好発します。症状は、耳痛や耳だれなどですが、小さなお子さんは症状をうまく言えないので、耳だれ以外では発熱、不機嫌、鼻水などいわゆるかぜ症状の場合がほとんどです。

私が沖縄に来た一九九〇年代前半までは、この急性中耳炎は治療すると比較的短期間に改善し治っていました。しかし、近年小さなお子さんを中心に、中耳炎が治りにくくなっています。これはここ数年、薬(抗生物質)の効きにくい、あるいは効かない細菌が増えているのが原因の一つといわれています。

特にこれら薬の効きにくい細菌は、保育園や幼稚園などの集団保育の場では、潜在的に広まっており、乳幼児の鼻の奥にはこれらの細菌が症状のないまま付着しているのです。また、通園中は、薬の服用が不完全になりがちです。服用が不規則になると治らないだけでなく、薬が効きにくい菌を生み出すことにもなります。適切な薬を正しく服用すること が治療のためには大切です。

しかし、いかに優れた薬を用いても、中耳炎の原因となる菌が存在する鼻の奥に、多量の鼻汁がたまっていては、中耳炎を治癒させることは望めません。鼻(特に鼻の奥)をきれいにし、とおりをよくすることは中耳炎治療の鍵をにぎります。

特に鼻がかめなく、鼻がせまい乳幼児では、鼻の処置で鼻をきれいにすることは重要です。病院での鼻処置はお子さんには怖くて、すこし痛い治療かもしれませんが、薬が効きにくくなった現代では大切な治療だと思います。可能なら自宅でも鼻汁を吸引することをおすすめします。

また、急性中耳炎は中耳という空間に膿(うみ)がたまって、痛みや発熱および難聴などをおこす病気ですから、鼓膜を切開し膿を出してあげれば、薬を用いなくても解熱し機嫌がよくなるお子さんも多いものです。薬の効かない菌が急増している現状では、一つの薬で中耳炎の原因となるすべての菌に効く薬はありません。特に抵抗力が弱く重症化しやすい二歳以下のお子さんは、できるだけ早期に膿を出したほうがよい場合が多くなっています。

鼓膜を切開した部位はほとんどの場合一週間程度で閉鎖します。ただ問題なのは、発熱、耳痛および耳漏などが消失しても中耳炎が治っているとはかぎらないことです。中耳に炎症や菌が残っていると、鼓膜が閉鎖した後に再び急性中耳炎を繰り返したり、滲(しん)出性中耳炎に移行したりすることがありますので、自己判断せず通院することが必要です。

また、薬の治療や鼓膜切開を行っても治りにくい中耳炎や、いったんは良くなってもすぐに中耳炎を繰り返す中耳炎が増加しています。治りにくい中耳炎には、鼓膜に換気チューブを留置しなければならないことも多々あります。

このように症状も治療もさまざまある中耳炎ですが、治らないことはありません。お子さんの中耳炎で大切なことは、おとうさん、おかあさんが病気をよく理解し、医師と相談して治療を続けていくことなのです。