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甲状腺の病気と食べ物(2005年3月8日掲載)

仲本 亜男(仲本クリニック)

神経質にならないで

海藻類の食べ過ぎに注意

甲状腺の病気と食べ物の関係については、いろいろな情報が交錯しており、患者さんに誤解されていることが多いようです。しかも、情報のほとんどは、科学的な比較試験を基にした結論ではなく、経験に基づいたあいまいな内容であるため、患者さんにとって不安の種にもなっていると思われます。今回、甲状腺の病気で治療中の患者さんのストレスを少しでも解消していただくために、甲状腺と関係する食べ物について、述べてみます。

まず、昆布などの海藻類(ヨードを多く含む食べ物)について。

甲状腺機能亢進症(ほとんどはバセドウ病)の場合、確かに、ヨード摂取量の少ない国では、治療中にヨードをたくさん取ると、抗甲状腺剤(メルカゾールやプロパジールなど)の効きが悪くなるといわれています。

しかし日本は、世界で最もヨードを摂取している国です。日本の土壌にはヨードが豊富に含まれており、海藻類を控えても、日本で採れた野菜、果物などのほとんどにヨードが含まれており、事実上、制限は困難です。しかも、日本料理に昆布だしは欠かすことができませんので、制限された患者さんはお気の毒なことになります。

以上の事情から、わたしは患者さんに、毎日昆布やひじきを多量に食べているのであれば週の半分以下程度に控えさせますが、人並みであれば海藻類を食べても差しつかえないと話しています。わたしはこれまで大勢の甲状腺機能亢進症を治療しましたが、海藻類を普通に食べて、治療に難渋したケースはありません。

慢性甲状腺炎(橋本病)などによる甲状腺機能低下症の場合、ヨードを過剰に摂取することにより、甲状腺機能がより低下することがあるといわれています。しかし、前述の通り、日本では厳密なヨードの制限はできませんし、普通程度に海藻類を食べるのであれば問題はありません。大切なことは、定期的に検査を受けて、適正な量の甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)を、ちゃんと服用することです。

次に、キャベツやカリフラワーなど(チオ―オキサゾリジンを含む野菜)について。

チオ―オキサゾリジンは、甲状腺ホルモンの生成に関係するヨードの吸収を阻害するといわれています。そのために、食べ過ぎると甲状腺機能が低下する可能性があります。しかし、これらの野菜は、ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富で、むしろ健康のために欠かすことができない食べ物です。毎日のように極端に多量に食べない限り、問題はないようです。

まとめますと、甲状腺の病気では、食べ物に対しあまり神経質にならないこと。また、ビタミン、ミネラルなどが豊富な食べ物を、偏らずにバランスよく食べることです。