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不整脈(2005年2月22日掲載)

大城 力(翔南病院)

心不全や脳梗塞の誘因に

「頻脈性」には高周波治療も

心臓は、血液を送るポンプの働きをしている「心室」と、全身の血液が戻ってくる上の部屋「心房(上室)」があります。通常、心臓は一分間に六十―百回、規則正しいリズムで心房―心室と拍動を繰り返して、全身に血液を送り出しています。この心臓のリズムは、心臓のてっぺんにある洞結節と呼ばれる司令塔から心臓に「収縮せよ」という命令(電気刺激)が送られ、調節されています。

電気刺激が発生するはずのないところ(洞結節以外)から、電気刺激が出ることもあります。心臓の拍動のリズムが狂って、脈が速くなったり遅くなったり、飛んでしまったりということが起こります。これが「不整脈」です。

脈が速くなる不整脈には、(1)期外収縮(2)発作性頻拍症(3)粗細動―などがあります。それぞれ上室性と心室性があります。

(1)の期外収縮とは、洞結節以外の部位から異常電気刺激が起こる不整脈で、正常な脈と脈の間に発生し「脈が飛ぶ」「胸がドックン」「胸がキューッ」などの症状を自覚することが多いようです。期外収縮は、心臓の基礎疾患がなく、自覚症状がない場合は治療の対象になりません。しかし、期外収縮の数が多く「どうき、息切れ」「不安感、恐怖感」などの症状によって、眠れないとか仕事に集中できないなど「生活の質」の低下を招いたり、「頻拍症」を起こす危険性がある場合は治療が必要です。

(2)の発作性頻拍症とは、「ドキドキドキ」と胸の強い拍動を自覚し、突然脈が速くなるものです。心臓が勝手に暴走した状態で、持続時間が長い場合は心臓の疲労を引き起こし、心不全の原因となります。「めまいや失神、強い胸部症状」を伴う場合や、WPW症候群という先天異常に伴う場合は、命にかかわることもあり緊急的な処置を要します。(3)の粗細動は、心臓のリズムが全く不規則になる不整脈です。心室性(細動)の場合は、心臓がけいれんする状態で「突然死」を招くもっとも危険な不整脈です。一方、心房細動は、日常的によく遭遇する不整脈です。脈がバラバラとなり、「胸苦しさ、胸の圧迫感、恐怖感」など、かなり強い症状を自覚する人もいれば、全く無自覚の人もいます。この不整脈の問題点は、症状の強さに関係なく、心不全や脳梗塞(こうそく)を起こす可能性が高いことです。つい最近でも、大変著名な某野球監督や元総理大臣が、現役時代にこの不整脈によって脳梗塞を起こしたことで、一般にも知られるようになりました。

頻脈性不整脈の治療は、薬物療法と非薬物療法があります。非薬物療法には「高周波カテーテルアブレーション」があり、不整脈の発生原因となる部位を高周波によって根治する治療法です。発作性頻拍症や治療対象となる期外収縮の約90%以上で根治が期待できる治療です。安易な抗不整脈薬の投与はかえって重篤な不整脈を引き起こすこともありますので、一度不整脈の専門病院でご相談ください。