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ICUでの救命透析技術(2005年1月18日掲載)

桑江 紀子(中頭病院)

「PMX」「CHDF」を併用

血中の炎症物質など除去

集中治療室(ICU)では、重篤な患者さんの命を救うため、最前線の治療が行われているが、透析技術を用いて救命率を高める方法がある。

時折、外科、内科いずれの疾患でも、敗血症や播(は)種性血管内凝固症候群(DIC)といった重篤な病態に陥ることがある。血中に細菌等が入り、血液凝固能の異常を来し、肺、腎臓、肝臓等の臓器に障害を与えるのだが、その際には、体内の組織や血中に炎症物質が多量に出ているといわれている。

腎臓、透析内科が、腎臓が働かなくなった腎不全の患者さんに対して、腎臓の代わりをする方法として人工透析を行っていることはご存じでしょう。それ以外に、ICUでの上記のような重篤なケースの場合、もちろん、治療の中心は感染巣の除去や適切な抗生剤の使用だが、腎不全の患者さんに対する透析方法とは異なる「PMX」「CHDF」と呼ばれる特殊な透析技術を併用することで、救命の効果を上げる、ということも行っている。[改行] 敗血症のケースでは、熱が出て、血圧が下がり、呼吸状態および意識状態も悪くなる、といったことが観察される。これは血中に菌が入ったことに対する生体の反応で、菌体成分の一部であるエンドトキシンという物質をPMXという方法で除去すると、呼吸は良くなり、血圧は上がり、全身状態は幾分良くなる。

またDICの場合はそれに続けて、あるいは単独で、持続的血液ろ過透析(CHDF)という方法を用い、炎症性物質を除去すると、障害されている臓器が一個もしくは二個の場合、救命の確率は高くなる。この方法は、千葉大学の救急が中心に行っており、日本では同大学の平澤博之教授が権威とされる。救命率については、まだデータ集積中のようだが、多臓器不全例では69・5%との同大学の報告がある。(1988―1998「CHDFの理論と実際」平澤)

筆者が経験した最近の例では、三十代の女性で、大腸がん手術後、敗血症とDIC、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)となった患者さんに対して、PMXを行い、さらにCHDFを併用したところ、劇的に回復し、一週間後には一般病棟へと移ることができた。

ICUでは外科、腎臓透析、循環器、呼吸器、消化器グループ等が、協力し合ってこのような重篤なケースに対応している。また、CHDFを行う場合は、二十四時間から数日間にわたり連続して透析を行うこともざらで、長いものでは十日から二週間ということもある。透析技師や看護師らの働きは不可欠であり、役割は大きい。これら医療チームの協力の下、腎臓、透析部門は、時折ある夜間のコールに眠い目をこすりつつ、患者さんの救命に努めている。

今回は、ICUで家族がそのような状態になった場合、このような方法もありますよ、という情報提供の趣旨で透析療法の一つを紹介した。