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おしっこが多くて近い(2005年1月11日掲載)

吉村 仁志(県立中部病院)

ストレスが原因の場合も

異常感じたら病院へ

会合で緊張して、出されたコーヒーや水をがぶがぶ飲んだ、肌寒い季節に薄着でドライブに出かけてしまった、クーラーの効きすぎた部屋で長時間過ごした―などでトイレが近くなり、薄いおしっこがたくさん出て、なかなかトイレから出られなかった経験、誰でもお持ちではないでしょうか。

また、赤ちゃんがミルクを飲んだと思ったら、すぐ紙おむつが重くなっておしっこをたくさんしている、子どもが夕食でカレーをたくさん食べてお水をたくさん飲み、夜中におねしょしてしまった―などの経験をお持ちのお父さん、お母さんも多いのではないかと思います。

このように汗をかかず、水分が皮膚の表面から蒸発しないような寒い季節や環境ではおしっこがよく出るし、ミルクや水分をたくさん取ったら、必ずおしっこに行きたくなることは、日常みんなが経験していることですね。これは腎臓が体に必要のない余分な水分を外に出してくれる正常な反応なのです。

では、異常と考えられるものにはどのようなものがあるでしょう。

まず、イライラや不快な気分を紛らわすためにお水をがぶがぶ飲んでしまい、たくさんのおしっこをすることが習慣になってしまう状態。これを心因性多尿といいます。精神的ストレス下にある乳児から大人までこのような状態は報告され、決してまれではありません。この場合、おしっこが近く、おしっこが多い原因が水分の取りすぎによるものであることを本人に気付かせると少しずつ良くなっていきます。

一方、体に水分が足りなくなるぐらいおしっこが多く、近くなってしまう場合。原因として次のようなものがあります。

第一に、尿に糖が降りる場合で、これは糖尿病になった時の特徴的な症状ですので、ぜひ覚えておきたいものです。第二に腎臓の働きが悪くなってきた時に起こる尿毒症と呼ばれる状態の初期。第三にコーヒーなどのカフェイン飲料の摂取、飲酒、利尿剤の服用など。第四に、まれなものとして尿崩症。

通常、体に水分が足りなくなると「抗利尿ホルモン」と呼ばれる指令が脳から出て腎臓に働き、尿を濃く少なくし、おしっこを減らします。この指令が何らかの原因で出なくなったり、働かなくなったりした時に、体に水分が足りなくなるぐらい尿が出ると、のどがとても渇いて水をがぶがぶ飲みます。この状態を尿崩症と言います。

尿崩症は、交通事故で頭を強く打った、脳に腫れものができた、お産の時にストレスが強くかかった―などにより起こります。また「抗利尿ホルモン」が脳からちゃんと出ているのに、腎臓でそれを感知しない腎性尿崩症という赤ちゃんの病気もあります。

おしっこがとても近くて一回の量も多い、そしてのどがしきりに渇くという場合は、一度かかりつけ医に相談されるといいでしょう。