今、最も注目を集めているサプリメントは、コエンザイムQ10(以下、CoQ)で しょう。これは、わたしたちが体内でエネルギーを産生する時に、重要な働きをするビタ ミン様物質で、人間は食品から補給するとともに、体内でも合成しています。しかし中年 以降、体内での合成能力が減少するため、いろいろな不具合が出る可能性があると言うの です。CoQは人体に広く分布していますが、特に心臓には多く、炎症や病気で減少する ので、以前から心臓病薬として病院で使用されています。しかし、健康な人にどれだけの 効果があり、どこまで安全であるかなどは、まだはっきり分かっていません。
さて、サプリメント等の健康食品類が脚光を浴びるようになったのは、活性酸素をはじ めとするフリーラジカル研究の進歩によります。以前は、わたしたちが生きる上で必要不 可欠の酸素が、体にとって有害でもあるとは、想像もしないことでした。しかし今は、そ れをほぼ常識のように感じている方も多いでしょう。体内で出来た活性酸素やフリーラジ カルといわれる物質は、がん予防作用、免疫作用などでわたしたちの体を守ってくれる一 方、過剰になれば、体を傷つけることもあります。
この障害を防ぐために、人間は何種類もの防御因子(抗酸化物質)を利用し、毒消しの 役目をさせています。代表的なものに、SODという酵素や、ビタミンC、ビタミンEが あり、CoQもまたその一つで、サプリメントの多くは抗酸化物質と考えられています。 体内での活性酸素、フリーラジカルによる害が、毒消しである抗酸化物質の機能を上回っ ている状態が、がんや各種生活習慣病、老化等の発症に関係しているため、不足分を補お うとするのは自然の成り行きです。
長寿日本一の再生を目指す沖縄県ですが、ウコンをはじめ、県産品の多くに抗酸化物質 が含まれているのは周知の事実です。そして、伝統的な沖縄料理や、よく体を動かしてき た戦前のライフスタイルが今、見直されてきています。食生活の欧米化、運動不足等が、 沖縄の長寿を脅かす大きな原因の一つであることはみなさんもご承知でしょう。そして、 基本的な食事がおろそかにされがちな風潮に、栄養学の専門家たちも警鐘を鳴らしていま す。
運動不足や肥満の解消、禁煙、節酒、緑黄色野菜などを多く取るといった食事内容の見 直しで、体内の抗酸化力(毒消し能力)は上昇します。健康長寿には、このような正しい ライフスタイルが重要なのです。
しかし、どうしてもという方には、実際、自分にどの抗酸化物質が不足しているのかを 見極め(これを測定することは可能です。ただし、健康保険は使えません)、不足したもの だけを補うのが理想です。抗酸化物質に関する研究も始まったばかりで、薬とののみ合わ せや、多剤併用、過剰摂取など、利用の仕方次第で思わぬ健康被害が出ることもあります。 かかりつけ医には必ず相談してください。サプリメントは、あくまで補助であることをお 忘れなく。