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かかりつけ医の利用法(2004年11月30日掲載)

比嘉 靖 (東部クリニック)

あふれる情報、共に検討

まずは適切な治療から

日々の外来診療で「血圧や高脂血症、糖尿病の薬は、一度のみ始めると生涯のみ続け なければならない」「運動、食事療法、サプリメント、民間療法で病気を治せるので、治療 は受けたくない」という患者さんからの声が最近増えていますが、それは本当の意味での 治療と言えるのでしょうか。病気の予防策と治療を混同してしまい、早期に治療をしてい ればと悔やむより、適切な診断と治療をなさるよう切望してやみません。

まず、薬物療法に関しては、病状の変化に伴い薬の量が加減、または不要になったりす ることもあります。このように適切な治療を受けていれば、早期に病状の改善に結び付く のですが、自己流の治療法に固執するあまり、病気にさらされる時間がだらだらと続き、 この間に病気による体へのダメージが広がるのです。このダメージは、なかなか取れるも のではありません。

このように判断を狂わせるのは、ちまたの口コミ情報やマスメディアからの情報であり、 それらは医学書、学術雑誌顔負けの情報で、その上きちんと整理できていないように思い ます。その情報量たるや、診療を受け持つわれわれでも、すべてを把握することは不可能 であり、それらの効果の検証、統計学的評価の解釈は一般の方にはかなり難しく、最新治 療法、薬品などの安全性や効果が、さも立証されたものとして受け取られているのは怖い ことです。

医学の世界では、最新治療法、薬物療法を確立するには、まず、試験管レベルで確認し、 次に動物実験を行います。この動物実験で、ある程度の効果と安全性が確認された上で、 人での臨床治験が行われます。この段階でも効果と安全性が確認できて、ようやく治療法 の一つとして認められます。

しかし、最近の医療現場では、患者さんの治療に使うためにまだクリアしなければなら ないハードルがあります。それは「大規模臨床試験」といわれる何千人、何万人を対象と した試験で、今行われている治療法と新しい治療法とを直接比較し、統計学的に評価判定 します。ここまでたどり着いた治療方法と薬剤を、国や医師は責任を持って使うことがで きるのです。つまり、裏付けと責任が前提ですが、ちまたの民間療法や薬品、栄養補助食 品には、魅力的な効能を盛んに訴え、多分に引きつけられる情報が多く見られ、それらに は安全性と効果の裏付け、そして責任を示す資料はほとんど見ることができません。

しかし、それらを一概に否定するものではなく、その情報の中にはかなり有望なもの、 効果のあるものが確かにあることも否めません。大切なことは、病気を早期発見、早期治 療し、その後に健康を維持することで、自分の健康状態を把握する「かかりつけ医」を持 ち、収集した情報を共に検討し、現在の体の状態に有益なものかを十分話し合うことが重 要です。流行より、まずは理解ある「かかりつけ医」を探されてはいかがでしょうか?