麻疹(ましん)(はしか)に関する話題は、同紙でも度々取り上げられており、読者の みなさんの関心も高まってきていると思います。沖縄県は、全国に比べ麻疹の予防接種率 が低く、一九九〇年以降、五回の麻疹の流行があり、特に一九九八年と二〇〇〇年には約 一年間に及ぶ大流行がみられ、多くの子どもたちが入院を余儀なくされました。そしてこ れらの子どもたちの90%以上は、麻疹の予防接種を受けていなかったのです。また、尊 い命を落とした子も少なくありませんでした。
このような状況下で、県では、全国に先駆けて小児科医が中心となり、子どもたちを取 り巻く医療、保健、行政、保育にかかわる人々や、さらにはメディアが参加して「沖縄は しか゛0゛プロジェクト委員会」が二〇〇一年四月に発足しました。同委員会では、子ど もたちを麻疹から守るために、沖縄から、日本から、ひいては世界から麻疹を撲滅させる ためのさまざまな活動を行い、着実に成果を挙げてきています。
麻疹は非常に伝染力の強い感染症で、いったん発症してしまうと有効な治療法はなく、 肺炎や中耳炎、時には脳炎を合併し、場合によっては死に至ることもある病気です。この 恐ろしい麻疹を予防する方法は、麻疹ワクチンの予防接種しかありません。しかも流行を 阻止するには、95%以上の接種率が必要だといわれています。
しかし、麻疹ワクチンの副作用を心配する保護者の声も少なからず聞かれます。麻疹に 自然にかかった場合と、麻疹ワクチンの副作用との比較表をご覧ください。ワクチン接種 後に発熱、発疹(ほっしん)などの副作用が時折見られますが、その程度や期間は自然に かかった場合に比べ、はるかに軽く、脳炎などの重篤な病気も、三千分の一程度です。
また、麻疹ワクチンは、鶏胎児胚(はい)細胞の組織培養を用いて作られるため、卵ア レルギーのある子どもに対する麻疹ワクチン接種後のアレルギー反応が問題になっていま したが、最近の研究や調査で、麻疹ワクチンに卵成分の混入はほとんどなく、接種後にア レルギー反応を起こした子どものほとんどはワクチンそのものではなく、ワクチンの安定 剤として使用されていたゼラチンが原因であることが分かりました。現在のワクチンには、 ゼラチンは含まれていないので、アレルギー反応を起こす子どもは激減しました。ただし、 過去にほかのワクチンや少量の卵摂取で強いアレルギー反応を起こした人は、念のために 皮内テスト(薄めたワクチンを少量、皮内に注射して、反応を確かめる方法)や、接種後 少なくとも三十分は経過を見る配慮が必要となります。
麻疹の恐ろしさ、予防接種の重要性、麻疹ワクチンの副作用は皆無ではないけれど、自 然にかかってしまうよりはるかに軽いこと、卵アレルギーがあってもほとんどの子どもが 問題なく麻疹ワクチンを接種できることがお分かりいただけたでしょうか。小児科医とし て、そして子どもを持つ親として、一日も早く世の中から麻疹という病気がなくなること を願い、そのために努力していきたいと思います。