病院の中で普通に語られている言葉は、一般的にはどう受け取られているのでしょう か?
アンケートでは、「病診連携」という言葉を聞いたことがある市民(新潟市)は50%未 満、その内容が分かると答えた患者(岩手県)は10%弱との報告があります。病診連携、 地域医療連携、かかりつけ医、複数主治医、セカンド・オピニオンと、いろいろな言葉が 並びますが、なかなか理解されていない言葉のようです。
今まで医療と関係がなかった人が病気になった時に、どこの医院や病院に行けばよいか を判断するのは難しい事だと思います。そこで大病院に行くと安心、となるようです。日 ごろから健康や家族の事を相談している医師がいれば、病状に合った診療所(医院、クリ ニック)や病院が選択できます。それが、かかりつけ医です。欧米ではホームドクター(家 庭医)です。しかし、日本のかかりつけ医は、病院で指導的立場の専門を持った医師がプ ライマリー・ケア(初期診療での総合的な診断と治療)を修得し開業する場合が多く、専 門を持ったホームドクターと言え、欧米との違いがあります。普段から何でも話せ、自分 の性格に合う、信頼できるかかりつけ医を見つけましょう。日常の健康診断を行い、身体 や病気の事、専門医の診療の事などを相談し一緒に考えてもらうのです。
かかりつけ医は自分の医療技術のみで患者さんの全身を管理治療することはしません。 自分の専門を生かしながら、他の専門医と連携し、日常の状態を治療管理してくれるのが かかりつけ医です。その意味で、他の専門の診療所や病院の専門医とかかりつけ医の「二 人主治医」、さらに、他の領域の専門医にも診てもらっている時には「複数主治医」という ことになります。その要がかかりつけ医となります。
患者さん自身が、この医師とこの医師に診てもらうと決め、医師の間で、患者さんの診 療情報の交換、検討を行ってもらい、より適切な診療と日常管理を受けられるようにする ことが「病診連携」「診診連携」であり、その全体のネットワークを指す言葉が「地域医療 連携」です。患者さんを軸とした信頼関係の上に成り立つ連携なのです。同じ病状を別の 医師に診てもらうセカンド・オピニオンもこの中に入ります。紹介状を頼まれて嫌な顔で 断る医師は、もういないと思います。万が一いるとすれば、医師を変えても良いと思いま す。医師への信頼と患者さんの疑問、納得は別です。そこで、連携の要であるかかりつけ 医を選ぶポイントを書きますと、(1)できれば自宅や勤務先に近く、近所の評判も良い(2) 話をしっかり聞き、気楽に相談に乗ってくれる(3)病気、治療、薬の事などを分かりや すく説明する(4)紹介状などは快く書き、必要に応じて専門医を紹介してくれる―などで す。患者さん自身が「命の主人公」「健康管理の責任者」と思えるように、医師とのより良 い関係を築けるように、わたしたち医療人も努力していきたいと思います。