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病理診断(2004年6月22日掲載)

国島睦意(県立中部病 院)

病気を詳細に把握

診断決定などにも役立つ

患者さんが病院に来院されると、適切な治療のために正確な診断が必要になります。

例えば、乳房にしこりがある場合、細い針を刺して吸引、あるいはしこりの一部を切り 取り、それを顕微鏡用のガラス標本にして観察すると、そのしこりが何であるのかがより 正確に分かります。

このような診断が「病理診断」です。この診断を専門とする医師が病理医で、内科・外 科・その他全科の病気をみるため、医師となった後に五年から十年の経験を要しています。

病理診断では、次のようなことが行われています。

まず細胞診断です。

例えば肺がんでは、痰(たん)にがん細胞が混じって出てくることがあります。そこで、 痰を実際に調べて、がん細胞があるのかどうかをみるのが細胞診断です。

また、子宮がん検診を受けられた方もおられると思いますが、その時、子宮の一部から 細胞をこすりとって、がん化しているかどうかをみます。これも細胞診断です。

次に組織診断があります。

例えば胃カメラで胃を調べる時、胃の粘膜の一部を三ミリ程度つまみとって調べる方法 があります。これは、細胞だけをみるのとは違い、細胞が形づくる組織構造もみることが できますので、情報が多く、より確実な診断方法といえます。

このほか、診断のために病変の「一部」を取ったもの、あるいは手術で病変の「全部」 を切除したものなど、患者さんの体から切り取ったものは、すべて病理診断がなされ、ど んな病変なのかが確認されています。これが組織診断です。

これらは、病気の診断の決定、治療方針の決定、手術後の対処方針の決定などに役立っ ています。

また、病理解剖診断があります。

不幸にして病死された患者さんのご遺体を、ご遺族の承諾の下に解剖させていただくの が病理解剖です。それによって、どれぐらい病気が進行していたのか、治療は適切であっ たのか、死因は何か、どうすればもっと長生きしていただけたのか、といったことが判断 されます。こうして医療の自己検証が行われ、今後に生かされていきます。

患者さんやご遺族の貴重な意思が真に生かされるよう、解剖結果は全国レベルで集め、 蓄積され、医学・医療の進歩に役立たせていただいています。その際、患者さん個人が特 定できないよう、プライバシーの保護には細心の注意が払われています。

病理診断はみなさまにはなじみの薄いものかと思いますが、患者さんの病気をより詳細 に把握するために、このような診断が行われています。