人間の体で排せつされるものはいろいろありますが、その代表的なものは便(うんち) と尿(おしっこ)です。これらのイメージはあまりよろしくありませんが、そのダーティ ーなイメージとは裏腹に、うんちもおしっこもとても素晴らしいものなのです。特にわれ われの体中を巡ってできたおしっこからは、いろんな健康に関する情報を読み取ることが できます。
というのも、われわれが食べたものが腸から吸収され血液となって体を巡り、あちこち で利用され、その中で体にとっていらなくなったものとして排せつされるものがおしっこ だからです。おしっこは、あなたの生活をお見通しで、生活習慣病など、あらゆる病気を 知っているといってもいいでしょう。さて良いおしっことはどういうものでしょうか? 体にとって大切なもの(タンパク質など)が漏れていないものが良いおしっこです。では 悪いおしっことは? 大切なもの(タンパク質、糖、血など)を漏らしてしまっているも のです。ではどうやってわれわれはそれを区別すればよいのでしょうか?
まずおしっこの色ですが、濁りがなく透明で、黄淡色またはビール色は正常です。色が 濃いからといって病気とは限りませんが、おしっこの色がウーロン茶やコーラのようなか っ色や赤、あるいは濁って白い色をしていたら、薬局や医療機関などで尿試験紙による尿 検査をしてみた方がいいかもしれません。おしっこの回数は季節やその時摂取する水分量 によって多少変動はありますが、一般的に一日あたり三回から十回が普通といえます。十 回以上ある場合はぼうこう炎などの可能性があります。それでも全く自分では気づかない こともあります。年一回の定期検診を積極的に利用するのは有効な方法です。
もう少し詳しい話をしましょう。良いおしっこには発熱時や運動後などを除き、タンパ クは漏れません。タンパク尿とは体に必要なタンパク質がおしっこに漏れている状態で、 腎機能の低下が考えられます。(糸球体腎炎、ネフローゼ症候群)。タンパク尿が持続する とむくみなども出現し、やがて腎不全となり透析などの腎代替医療が必要になることがあ りますので放置するのは危険です。
また、良いおしっこには、ブドウ糖がたくさん混じることはありません。ところが、糖 尿病になって血液中のブドウ糖の値(血糖値)が高くなると、腎臓の処理能力を超えるた め、おしっこの中にブドウ糖が混じるようになります。これは糖尿病の危険信号です。(糖 尿病でいえば、血糖値一デシリットル当たり一六〇〜一八〇ミリグラム以上)。また血糖値 が正常であっても、腎機能が低下している場合には、尿糖が陽性になることがあります(腎 性糖尿)。しかし重要なのはここからで、たとえ糖尿病になったとしても、尿検査は糖尿病 の方には血糖値と同様に重要なものなのです。それはおしっこが糖尿病の進行具合を教え てくれるからです。糖尿病でタンパク尿が出現した場合、黄〜赤信号です。(腎不全への進 行の可能性あり)。ですから、糖尿病は血糖だけではなく、おしっこもよく調べることが大 事です。
このようにおしっこを調べれば、腎臓の病気だけでなく、高脂血症や高血圧症、糖尿病 といった生活習慣病の様子まで分かります。ご家族の生活習慣病の健康管理をする上で欠 かせない情報をおしっこから得ることができるのです。おしっこはえらい。