長寿大国日本、その中でもさらに長寿の県が沖縄県です。現役で畑仕事に励むオバア の姿は感動的でさえあります。そんなオバアに迫りくる危機、それが今回お話しする骨粗 鬆(しょう)症です。
骨粗鬆症とは骨の量が減ったり、構造に異常をきたすことで、骨折の危険性が高い状態 になることを言います。
ではなぜ骨粗鬆症になるのでしょう。特定の薬の服用などが原因となることもあります が、最大の原因は閉経による女性ホルモン(エストロゲン)の低下です。エストロゲンは 骨を作っているカルシウムが骨から出ていくのを抑える働きをしています。当然のことな がら骨粗鬆症は女性に多く、六十歳代の女性の半数、七十歳代の女性の約六割が骨粗鬆症 といわれています。
骨粗鬆症になって最も困ることは、骨折とそれに伴う日常生活レベルの低下です。実際、 骨粗鬆症による骨折は、高齢者の寝たきりの原因で脳卒中、老衰に次いで多い原因となっ ています。寝たきりは痴ほう、感染症の原因となり、例えば骨粗鬆症の高齢者が転倒して 受傷する大腿(たい)骨頚部(けいぶ)骨折という、太ももの付け根の骨折では、手術を しても一年以内に5―20%は死亡し、生存しても日常生活レベルは転倒前より下がってし まいます。
ちなみにわが国では、年間約五―七万人が大腿骨頚部骨折を受傷していて、高齢者の方々 にとっては決して人ごとと言える数字ではありません。大腿骨頚部骨折のほかにも腰の骨 がつぶれる腰椎(ようつい)圧迫骨折、転んだ時に手をついて手首の骨を折る橈(とう) 骨々折などは身近な高齢者にもよく起こっています。
骨粗鬆症はレントゲン、骨量測定など簡単な検査で診断できますので身長が低くなって きたり、背中が丸くなってきたり、腰痛が続いたりするようなら、お近くの整形外科を受 診することをお勧めします。
予防、治療には食生活の配慮、適度の運動、日光浴、薬の使用などが挙げられます。
食事では一日に八百ミリグラム以上のカルシウムを目標に乳製品、小魚をとるようにし ます。ただし味付けが濃いと、カルシウムは尿と一緒に排せつされてしまいますので薄味 を心掛けましょう。
運動は週三日以上三十分から一時間ほど、できればプール、自転車などひざを痛めない ような運動がよいでしょう。
日光浴はコレステロールをビタミンDに変え、カルシウムの骨への吸収を助けてくれま すが、沖縄の強い日差しを直接浴びることは避け、朝夕のちょっとした散歩で十分です。
また、近年では骨を壊す破骨細胞を抑えたり、女性ホルモンの働きを行う内服薬が広く 使われるようになり、骨密度の上昇、骨折の予防に期待が持たれています。
今元気でも、ちょっとした転倒が原因で思わぬ事態に発展することはたくさんあります。 骨粗鬆症の検査のほかにも転倒を予防するために家の中の段差をなくしたり、廊下に手す りをつけたり、できる予防はしておくことが肝心。転ばぬ先のつえですね。