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術後鎮痛(2004年5月11日掲載)

花城久米夫(沖縄赤十 字病院)

手術終了前の治療が有効

多様な方法で痛み少なく

最近、手術の前に、病棟で麻酔科の術前診察に行くと、患者さんから「手術のあと痛 くないですか? どれぐらい痛いですか?」という質問をよく受けます。病気に対する説 明を受け、手術による治療法を選んだ患者さんにとって、当然の質問だと思います。

私たち麻酔科医は、手術を受ける患者さんに、手術中、全く痛みを感じないように麻酔 をかけ、また、呼吸・循環・代謝の管理を行い、安全に手術が終了するように、仕事を行 っています。手術は、外科側からの手術の申し込みで、病名や手術法が分かります。患者 さんの検査結果やこれまでの病歴・手術歴・現在の病態などを検討して、どのような麻酔 法にするかを決めます。頭部・胸部・腹部、四肢と、いろんな場所が手術の部位となりま すので、それによっても麻酔法が変わります。

私たち麻酔科医は、それぞれの手術に応じて、全身麻酔や脊椎(せきつい)麻酔、硬膜 外麻酔と、それを併用した方法で麻酔管理を行います。

手術後、最も痛い手術は開胸手術といわれています。次に痛いのは上腹部手術(特に胃 の切除術)、下腹部の手術の順です。最近、鏡視下手術が行われるようになって術後の痛み も減少したといわれていますが、まだ、手術後の痛みは残っているようです。

そこで、私たちはこの手術後の鎮痛法の一つの手段として、手術中から使用している持 続硬膜外チューブを積極的に使用して、術後の痛みの治療に応用しています。硬膜外チュ ーブの留置は専門的な技術を要しますが、麻酔科医はそのトレーニングを受けています。

また、手術後の痛みは、痛みを感じる前に、手術の終了の前に治療を始めるのがより効 果的であるといわれていますので、私たちは、局所麻酔薬や鎮痛薬を硬膜外腔に投与して 早くからの治療を開始します。痛みの強さを予測して、局所麻酔薬の種類や濃度、投与量、 鎮痛薬の種類や量を慎重に選んで、ディスポーザブルの持続注入器より投与します。

現在は、これにPCA装置(患者さんが痛みを感じた時に、自分でボタンを押して追加 の薬を注入する)を付けて、より万全な治療を期しています。

この硬膜外鎮痛法は、大変有効な方法ではありますが、残念ながら、患者さんの状態に よっては施行できない方もおられます。アスピリンなどの抗凝固薬を服用中の方や、背中 に感染があり、チューブの留置ができない方々です。このような方には、持続皮下注射で 対処しています。また、ほかにもいろいろな注射薬、座薬、経口薬の鎮痛薬があり、その 時々に使い分けて使用できます。私たちは、手術を受ける患者さんが術後に痛みを感じる ことなく、一日も早く回復するよう協力していこうと思っています。