数カ月前、「新しく開発された関節リウマチの治療薬で間質性肺炎が出現」との新聞記 事を見かけました。
また、一昨年に発売され、夢の抗がん剤と言われた「イレッサ」でも間質性肺炎で死亡 例が出て問題になったことがあります。
では、間質性肺炎とはどんな病気でしょうか。今回はこのことについて説明したいと思 います。
初めに肺の働きについて考えてみましょう。肺の最も重要な役割は、空気中の酸素を血 液中に取り込むことです。鼻や口から吸入された空気(酸素)は、喉(こう)頭(のど)・ 気管・気管支を経て肺胞と呼ばれる小さな袋状の部分へ達します。肺胞へ運ばれた酸素は 肺胞の壁を通過し、肺胞周囲に網目状に存在する肺毛細管に入っていきます。肺毛細管を 流れる赤血球中のヘモグロビンと結合した酸素は、肺静脈・心臓を経て全身に送られるの です。この過程の中で肺胞壁から肺毛細管へ至る部分を肺間質と言います。
間質性肺炎とは、この部分に障害を来す疾患の総称なのです。そのため、生体は酸素不 足となり、呼吸困難を呈し、重症例では人工呼吸器が必要となることもあります。
一般に言われる「肺炎」は、空気中の病原微生物(細菌)が肺胞内に侵入・増殖し、発 熱・せき・たん・呼吸困難などの症状を呈する病気です。肺炎の原因は主に細菌感染です が、間質性肺炎の原因は多種多様です。
冒頭に述べたように薬物中の有害物質が、肺毛細管を経て肺間質に障害を与えることも あります。また、関節リウマチや悪性リンパ腫などの病気に併発する場合や有害物質を吸 い込んだ時に起こる間質性肺炎もあります。その他に原因不明の間質性肺炎も多く存在し、 特発性間質性肺炎と呼ばれています。
間質性肺炎の初期症状は、主に息切れと乾性咳嗽(がいそう)(たんを伴わないせき)で す。診断には、従来の胸部単純写真や胸部CT検査では不十分で、高分解能CT撮影が必 要です。また、障害されている肺間質の状態を病理組織学的に確認するために、気管支鏡 や胸腔(きょうくう)鏡による肺生検も診断に重要です。県内では、呼吸器専門医のいる 大きな病院でこれらの検査を受けることができます。
間質性肺炎の臨床経過は、原因や肺間質の障害の程度によりさまざまです。症状もなく 数年から数十年を過ごす症例もあれば、急速に呼吸困難が進行し数カ月で死に至る症例も 少なくありません。
治療は、主にステロイドといわれる薬剤や免疫抑制剤を使用しますが、副作用も少なく ありませんので、治療を開始する時期や薬剤の投与量、副作用対策など細心の注意が必要 となります。
このように間質性肺炎は、個々の症例によって原因・診断方法・経過・治療法が異なり ます。健康な状態で人生を送ることに越したことはないのですが、不幸にして間質性肺炎 の可能性があると言われた方は、ぜひ一度、呼吸器専門医の助言を受けた上で今後の対応 を考えられることをお勧めします。