昔の川は清流でした。今は時と共に河川の汚濁が進んでいます。川の流れを人の血管の 一生に例えてみると、上流(誕生から少年時代)は、まだ血管もきれいです。中流(青年 時代)近くになると生活習慣からくる過剰物質(お菓子、高カロリー飲料水、アルコール、 動物性脂肪など)が多く入り込み、清流は徐々に汚濁し、肥満が認められ、高脂血症とな ります。
さらに下流(中年から壮年)に近づくにつれ、川は分岐し高血圧、糖尿病という支流に なり、河口近くでは流れも遅く、停滞して合併症(脳卒中、心筋梗塞(こうそく)、腎不全、 悪性腫瘍(しゅよう)など)が出てきます。
しかし、最近では上流でも汚濁(小児肥満)が見られ、事態はより深刻です。川(血管) の上流に見られる肥満が連続的に高血圧、糖尿病などの生活習慣病を引き起こします。肥 満は病気の始まりですので、生活習慣病予防にはまず肥満対策が重要です。
生活習慣の改善で大事なことは、個人マニフェスト(数値目標)の作成です。日本肥満 学会ではBMI(体格指数=体重キログラム÷身長メートル÷身長メートル)二十五以上を 肥満としています。
身長百七十センチ、体重七十四キロの人はBMI二十六で肥満ですので、生活改善を目 指し、まず目標体重を設定します。心血管リスクの一番少ない理想のBMIの値は、二十 二です。それに従うと身長百七十センチの人は六十四キロが理想体重ですが、一気に減量 するのはなかなか大変です。
このため最近では理想体重でなく現体重の5〜10%減でもよいと言われています。目 標値をBMI二十四として式に当てはめると、身長百七十センチでは六十九キロ(現体重 のマイナス7%)です。最初は体重七十キロを割るように月一キロの減量ペースで頑張り ましょう。
さて減量するには、やはり食事の適量があり、理想体重に活動量に応じたカロリーをか けて求めます。身長百七十センチの人で事務職なら目標体重が六十九キロなので、二十五 キロ!)をかけて千七百キロ!)。これが一日の食事の適量です。
減量には運動(三十分のウオーキング)のほかに毎日体重を測定し、日記をつけること も大切です。この減量日記をつけることで「何を食べたから体重が増えた」「外食を控えた ら何キロ減った」など、因果関係が分かるようになります。具体的な食事指導は各市町村 や保健所、医療機関に栄養士がいますので気軽に相談してください。
また、高血圧、糖尿病、高脂血症などのある人は、個人マニフェストを決める際にはぜ ひ、かかりつけ医に相談してください。
これからは私たち一人ひとりがもっと学習し、自己管理を強化して、生活習慣を改善し ていくことですが、さらに自己管理をサポートする環境も重要です。
長野県のように多くの食生活改善推進員、保健指導員が地道に活動できるシステムや、 住民健診の際に配布される健康手帳に日々の血圧、体重を記録し、定期的(三カ月ごと) に医師、保健師が指導する体制がなければ、「長寿復活」の道は開けないと思います。