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アスピリン(2004年2月24日掲載)

徳村 保昌(とくと くクリニック)

心筋・脳梗塞の再発予防にも

自己判断避け医師処方薬を

皆さんはアスピリンと言うお薬をご存じですか?「何だ、頭が痛い時に飲む薬でしょ」と おっしゃると思いますが、その通りです。今回はそのアスピリンのお話をしてみたいと思 います。

約百年も前に開発された薬ですが、鎮痛作用だけではなく、いろいろな作用が認められ てきています。一九七〇年代に抗血小板作用(簡単に言うと、さらさら血にする作用)が 認められてから、アスピリンの少量持続投与(七五―一五〇ミリグラム/日)が、心筋梗塞 (こうそく)や脳梗塞の再発予防薬として使われるようになりました。

さらに心筋梗塞などの急性冠症候群の発症直後にも、アスピリンを投与して治療を開始 するようになりました。最近では動脈硬化進展の危険因子としての高血圧、高脂血症、糖 尿病、肥満、喫煙などを併せ持つ患者さんには、積極的にアスピリンを投与して、心血管 系の病気を予防しようとする医師が増えてきました。

実際アスピリンで治療を受けた患者さんは、投与を受けていない患者さんに比べ、症状 の改善に差が認められています。

最近報告された作用には、動脈硬化抑制作用や血管新生抑制作用、抗酸化作用、抗がん 化作用などがあります。簡単に言うと、がん細胞を発生させにくくし、増殖させにくくす るという可能性があるということです。

昨年海外で発表された文献に、大腸がんの治療歴のある患者さんにアスピリンを投与し たところ、ある程度の化学予防作用をもたらし、再発予防を認めたとの論文がありました。 今後さらに研究が進むと適応範囲が広がってくる可能性があり、大いに期待されます。

さて、以上の話からは、アスピリンがとてもいい薬で、良いことばかりのように思われ ますが、まったく副作用がないわけではありません。胃かいようなどの出血性の病気があ る場合や、アスピリンぜんそくの患者さん、過敏症の人には向いていません。また抜歯な どの治療を受ける際には、一時内服を止めなければいけないこともあり、注意が必要です。

しかし最近の低用量のアスピリン製剤は腸で溶けるように工夫されて、長期に服用でき るようになっています。価格も安い薬ですので、複数の動脈硬化性の危険因子があり、現 在治療を受けている人でコントロールのうまくいっていない場合などは、かかりつけの医 師と相談されてみてはどうでしょうか。

ただし市販されているアスピリンを含む解熱鎮痛薬は、高用量で、低用量の約十倍のア スピリンが含まれて いますので、長期に服用すると副作用が出てしまいます。そのため必ず医師に処方しても らい、自己判断で内服することはやめましょう。

アスピリンは薬効の高い薬です。しかし病気予防と健康のために大切なことは、やはり 生活習慣を改善し、バランスの取れた食事(野菜、果物をたくさん摂取し、不飽和脂肪酸 を使う。塩分は控えめにするよう努める―など)と、運動(有酸素運動を中心に、週に三回 以上で三十分―四十分程度)、そして禁煙を心がけ、ストレスをためないよう楽しく暮らす ことが一番ですよ。