「冷え」に悩んでいる、という方はたくさんおられると思います。特に女性は男性に比べて筋肉量が少なかったり、血の巡りが悪くなりやすいため、冷えやすいと言われています。
その症状は、手足が冷える、おなかが冷える、といったわかりやすいものの他に、冷えだとは気づかないさまざまな症状があります。疲れやすい、手足が重い、頭痛、めまい、肩こり、腰痛、関節痛、便秘、下痢、食欲がない、そして女性では生理痛などもそうです。もちろん、冷え以外の原因でもこれらの症状はおこります。検査をしても他に原因がはっきりしない場合には、冷えからきている可能性も考えてみてください。
残念ながら冷えの特効薬というものはありません。西洋医学では自律神経の乱れが原因と考えられていますが、東洋医学ではエネルギーや栄養不足によるもの、血の巡りが悪くておこるもの、体内の水分の過剰によるもの、などと細かく分けて原因を考えて、それを改善させるお手伝いをする漢方薬を処方します。
さて、冷えの原因をいくつかあげましたが、実はその原因の原因を自分で作っていて、しかもそれに気づかないことがとても多いのです。
やせ形の若い女性Aさんは、手足の冷えと便秘に悩んで受診されました。「冷えのせいで眠れないんです」と訴えていますが、彼女の服装は、夏でもないのに首周りが大きく空き、足元もサンダルに素足なのです。スリムな体形にとても似合ってはいますが、冷えを感じる人は、首周り、足首、おなかなどはなるべく温かくしておくべきです。
中学生のBくん。おなかがつかえて食欲がないとのことで受診されました。野球部員で真っ黒に日焼けして体格もよく、冷えとはまったく縁がなさそうなタイプです。しかしよく聞いてみると、部活の休憩時間に氷水をガブガブ飲んでいるということがわかりました。常温の水を飲むようにしてもらったところ、症状がよくなりました。現代人は冷蔵庫のおかげで年中冷たい食べ物や飲み物を摂るようになりましたが、たとえ夏でもおなかの中を冷やすのはよくありません。
冷えの症状に、漢方薬は確かに効果があります。しかし、自分で作っている冷えの原因をそのままにしていると十分な効果は得られません。習慣になっていることや、好きでやめられないことの中に原因があることが多いので、ぜひ一度自分の生活習慣を見直してみましょう。