沖縄県における肝疾患に関して、四つのデータを示しながら考えていきたいと思います。
〈沖縄県の肝疾患死亡率は全国ワースト〉
2010年沖縄県男性の肝疾患死亡率は、人口10万人当たり17・9人、女性は5・8人です。この死亡率は全国で、男性はワースト1位、女性はワースト2位になります。1980年の調査では、男性はベスト2位、女性は21位だったことを考えると、実態の調査と対策が緊急な課題となっています。
〈「アルコール性」での死亡率は全国の2倍〉
肝疾患死亡率を詳細に分析するためには、肝疾患の成因死亡率を調べることが重要です。肝疾患の成因には(1)ウイルス性(2)アルコール性(3)肥満・脂肪性(4)自己免疫性(5)その他−があります。厚生労働省の統計によりますと、沖縄県のアルコール性肝疾患の死亡率は男性も女性も全国平均の約2倍で、ワースト1位です。
さらに詳細な分析するために私たちは当院の入院肝硬変173人の成因別分析を行いました。その結果、男性ではアルコール性肝硬変が74%、非アルコール性脂肪肝硬変が1・9%、非アルコール性肝硬変疑いが4・8%でした。女性ではアルコール性肝硬変が12%、非アルコール性脂肪肝硬変が23%でした。
全国に比べるとウイルス性肝硬変は男女とも少なく、男性ではアルコール性肝疾患が、女性では非アルコール性脂肪性肝疾患が約2倍多いことが明らかになりました。
〈アルコール消費量は全国一〉
次に国税庁統計から沖縄県のアルコール消費量について調べました。
沖縄県の2010年のアルコール消費量は成人1人当たり11・8リットルで、全国平均の1・6倍で全国一高い。私たちの肝硬変の成因別分析の結果を裏付けるものでした。
〈無職者は高い死亡率〉
沖縄県は全国で最も失業率が高く、1人当たり県民所得も全国で最下位です。厚生労働省の調査によると、肝疾患の死亡率は男性の就業者では人口10万人当たり4・8人ですが無職者では53・3人で、10倍以上も高い死亡率です。女性でも無職者は就業者の3・7倍も高い死亡率です。
肝疾患はアルコールや肥満等が直接原因になりますが、疾病死亡率と社会経済環境と密接に関係している疾患です。沖縄の素晴らしい文化である健康長寿を継承するために適性飲酒を心がけましょう。