子どもを持つ親なら一度は耳にしたことのある病気に“川崎病”があります。主に4歳以下の子どもにみられる病気です。
主要症状は、(1)発熱(無治療では5日以上続く)(2)目の充血(3)唇や舌の発赤(4)発疹(5)手足の発赤や腫れ(解熱後しばらくたってから手足の指先の皮膚がむける)(6)首のリンパ節の腫れ−の六つで、そのうちの五つ以上があれば川崎病と診断されます。これらの症状の三、四つしかなくても発熱が続き、他に原因がはっきりしない場合に川崎病不全型と診断され治療を行うこともあります。過去にBCGの予防接種を受けていれば、接種痕の発赤も重要な参考症状となります。
川崎病は、1967年に日本赤十字社医療センターの川崎富作先生が医学雑誌に発表され、病気として認められるようになりました。
この病気は東アジアに多い病気ですが、その中でも日本は最多の罹患(りかん)率です。
国内患者数は年々増加傾向にあり、2005年以降は毎年1万人を超えており、12年は1万3917人と1982年の流行期に次ぐ2番目の患者数であり、罹患率は0〜4歳10万人あたり264・8人と過去最高でした。
これまで多くの研究が行われてきましたが、いまだ原因ははっきりしません。しかし多くの治療法が試みられており、90年代に血液製剤である免疫グロブリン療法が画期的な成績をおさめ、現在ほとんどの患者で投与されています。国内における川崎病の致死率は当初は1〜2%程度でありましたが、免疫グロブリン療法の登場もあり最近は0〜0・03%と著明に改善しています。
合併症として、発症後1カ月以降も残存する心臓の冠動脈瘤(りゅう)(心臓を栄養する血管のこぶ状の拡張)は患者全体の3%前後ですが、将来的に狭心症や心筋梗塞を起こす恐れの高い巨大冠動脈瘤は0・2%程度です。これらの合併症は発熱が1週間を超えると増加してくるといわれていますが、これらの心合併症(特に巨大冠動脈瘤)を防ぐことが川崎病治療の最大の目標となります。
重症例を一人でも減らす治療法の研究が本邦を中心に行われていますが、最も大切なことは早期診断、早期治療です。発熱や発疹などですぐに川崎病を心配する必要はありませんが、川崎病の主要症状とBCG接種痕の発赤のいくつかの症状があれば、速やかに小児科を受診するよう心がけてください。