風邪でもないのに長期間「のどがイガイガ、ヒリヒリする」または「のどに何か詰まった感じがする」「咳(せき)ばらいが止まらない」といった、のどの違和感を覚えたことありませんか? これまでは、のどの違和感があるにもかかわらず、耳鼻咽喉科で診てもらっても明らかな異常を指摘できなかった状態を「咽喉頭(いんこうとう)異常感症」と診断してきました。この疾患は、患者さんには自覚症状があるけれども、医師には何もないと判断されるため、病院を渡り歩くドクターショッピングを繰り返すことが多いのが特徴でした。
近年、内視鏡機器の発達や新しい診断基準により、違和感の原因にはさまざまな病因が関わっていることが分かってきました。これまでの内視鏡検査では何もないと判断されてきた多くの患者さんに鼻や副鼻腔(ふくびくう)、咽頭や喉頭に何らかの慢性炎症が存在し、その原因は一般的な感染症だけではなく、胃液逆流に伴う咽頭、喉頭の粘膜炎によるものが数多くあること、さらにアレルギーによる喉頭アレルギーも少なからず存在することが分かってきています。
胃液逆流による逆流性食道炎は有名で、食道内視鏡で食道粘膜に損傷を認めれば確定診断となります。咽喉頭逆流症も同様に、喉頭内視鏡で喉頭粘膜が赤かったり声帯後方に肉芽ができたり、粘膜肥厚があれば確定診断されます。しかし症状が強くても粘膜炎が軽い場合には内視鏡でも判別できないこともあります。診断確定には咽頭、食道の胃酸濃度を測るpH(ペーハー)モニタリングが必要ですが、侵襲(しんしゅう)の大きい検査ですので一般クリニックでは行われません。
咽喉頭逆流症を疑う症例に対し、一般的にはPPIテストと呼ばれるプロトンポンプ阻害剤(PPI)内服による酸抑制試験が現実的です。PPIを一定期間内服させ症状の変化を見ていく、検査と治療を兼ねた方法です。効果があれば生活指導と内服を継続し、効果がなければ感染症を考慮して消炎治療、あるいは喉頭アレルギーに対する抗アレルギー治療を、さらに初期の癌(がん)を念頭においた検査を行うといった、他の病因も考慮して、患者に応じた治療戦略をつくることができます。
このように「咽喉頭異常感症」は、最新の内視鏡診断機器、診断基準で確定診断が行うことができ、治療に結びつけることができるようになってきました。のどの違和感のある読者のみなさん、癌の不安を取り除き症状をなくすために耳鼻咽喉科専門医へご相談ください。