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最近の結核(2013年9月23日掲載)

久場睦夫・国立病院機構沖縄病院

高齢での罹患が増加

わが国の結核は1950年代から大きく減少してきています。しかしその減少速度は当初、約10%ずつ減ってきていたのが、80年代から鈍化し近年は約4%程度で推移し、減少率の改善は見られません。2011年は2万2681人が新発生、罹患(りかん)率は(人口10万人中)17・7で世界的に見るとまだ中蔓延(まんえん)国に位置しています。

最近の結核の大きな特徴は高齢者が増えてきていることで、11年は70歳以上が48%を占めています。本県はというと最近の5年間でみると新発生患者は08年277人(罹患率20・1)、09年235人(17・0)、10年260人(18・7)、11年269人(19・2)、12年295人(20・9)と、横ばいかむしろ増加傾向にあります。また11年の本県の70歳以上例は58・4%と全国平均を大きく上回り高齢化がさらに進んでいます。本県において入院を要する患者さんが集中する沖縄病院の最近3年間の動態をみますと、総計305人が入院され平均年齢は69・9歳、年代的には70歳以上の方々が60%を占めています。

結核のイメージとしては映画や小説に見られるような咳(せき)や喀血(かっけつ)といった症状を思い浮かべることが多いかと思います。確かに比較的若年者においては咳などの呼吸器症状が多くを占めますが、現在半数以上を占める高齢者結核の方の症状は少し違います。咳・痰(たん)・血痰・息切れ等の呼吸器症状はみられず、熱、食欲不振、体重減少などの非特異的な症状のみをきたすことが大半です。つまり咳や痰・血痰など肺や気管支の症状がないから結核ではない、と安心はできないのです。

また残念ながら、結核による死亡および結核をきっかけに持病が悪化し亡くなられる場合が高齢者に多くみられます。当院では過去3年間に入院された305人のうち65人の方が死亡されましたが、そのうち90%が70歳以上です。咳・痰・血痰など呼吸器症状がある場合はもちろん、単に熱、さらには食欲低下・やせ等、いわばとりとめのない症状だけがみられる場合でも高齢者の場合は結核がありうることを念頭におくことが重要です。

最近、集団感染事例も散見されていますが、述べましたように結核はまだまだ稀(まれ)な病気ではありません。咳・痰などの症状時はもちろん、特に高齢者においては“熱や風邪、食欲不振や体重減少だけ”の場合も2週間以上続くときは結核の可能性も忘れることなく、早めの医療機関受診をお勧めいたします。