血圧は内科の中で最も患者さんが多い病気です。今回は高血圧専門の立場から三つの話題を提供します。
夏に血圧が低下することをご存じでしょうか? 最近は病院で測定する血圧だけでは測定回数が少ないので、家庭での血圧の記録を参考にしています。その結果をみると、夏場は多くの方々の血圧が下がっていることがわかります。その原因としては、夏の暑さによる発汗、そして全身の血管がひらくことが一番大きいと考えられます。発汗により身体から塩分が出ていくために、体内の水分量が減ります。もちろん脱水症や熱中症になってはいけませんが、適度な運動・発汗は血圧を下げる効果があるのです。
もうひとつ考えられるのが、沖縄の夏野菜効果です。ゴーヤー、フーチバーをはじめとする緑黄色野菜はカリウムを多く含んでおり、これが血圧を下げるのです。ただし、腎臓病がある患者さんはカリウム制限が必要な場合がありますので、必ず主治医の先生に確認して下さい。
2点目。患者さんから足のむくみについてよく相談を受けます。一番多いのが朝はむくんでいないが、夕方までに足がむくんでしまうという相談です。中高年の女性からの相談が多くその理由としては静脈瘤(りゅう)などの血のめぐりによるものが多いと思いますが、その他に薬が原因になっていることがしばしばあります。日本ではカルシウム拮抗(きっこう)薬という薬が最も多く使用されていますが、この薬は全身の血管をひらくことで血圧を下げるため、むくみを起こすことが多いのです。
私の外来でも、足がむくむので腎臓が悪くなったのではないかとよく相談を受けます。その中の多くの方々がカルシウム拮抗薬を服用しています。むくみは自分で気付きやすい症状ですが、必ずしも病気と関係していないということです。寝るときに足元にタオルケットをおいて、少し足を高くすると翌朝までには改善します。
最後に。昨年、当院通院中の285人の高血圧の患者さんにアンケートをしました。その結果から、初めて高血圧を指摘された6割の人は自覚症状がなかったこと、またそのためか4人に1人は放置してしまったことがわかりました。沖縄の働く世代の方々の中で、上の血圧が200以上あっても放置している人が少なからず存在していることがわかっています。読者の皆さん、高血圧を初めて指摘されたら早めにかかりつけ医に相談するよう、お願いします。