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胸やけと胸痛(2013年9月9日掲載)

岩下秀彦・いわした内科クリニック

痛む場合 早期受診を

皆さんは食べ過ぎや、飲み過ぎたりした時に、胸の真ん中あたりに鈍い痛みを感じた事はないですか? このような痛みを胸焼けと言います。

胸焼けは病気でも起こり、その代表的なものに(1)胃酸が食道内を逆流して起こる逆流性食道炎(しかし、胸焼けの時に水を飲むと、症状が和らぎます)(2)食道内で真菌やウイルスに感染して起こる食道炎(3)ある種の薬を飲むことで起こる食道炎−があります。

ここでは、逆流性食道炎について説明します。症状としては、胸焼けが有名ですが、他にも、胸痛や背部痛、逆流した胃酸による中耳炎、のどに痰(たん)が絡まっているような違和感等もあります。

その原因としては、お酒、タバコ、コーヒー、脂っこい料理、味の濃い料理、食べてすぐ横になる事、肥満、ベルトでお腹(なか)をきつく締める事(女性の高齢者に多い)、骨粗鬆(しょう)症のために背骨が曲がる事等があります。

さらに最近では、中高年の方々を中心にピロリ菌の除菌が進み、胃の消化機能が回復した結果、酸度の高くなった胃酸が食道内を逆流して起こる逆流性食道炎も増えてきています。

治療法としては、右に記したような原因を避け、寝る時は上半身が下半身より少し高くなる体位をとり、胃酸が出るのを抑える薬と消化運動を促す薬を飲む事です。以上のような治療で、ほとんどの逆流性食道炎は治癒します。

ところが、逆流性食道炎の中には、患者さんの体質的理由で、これまでの胃酸を抑える薬では、効果が十分に得られないことも少なからずありました。しかし、最近このような患者さんに対しても有効な、胃酸を抑える新しい薬が開発されています。

その他に、食道がんも、早期にはほとんど無症状ですが、進行すると胸焼けを認めます(この場合、胃カメラによる観察と組織検査が必要不可欠です)。

狭心症でも胸焼けによく似た症状を呈する事があるので要注意です。例えば、運動中か運動の直後に、胸焼けによく似た胸痛を認め、運動をやめると、次第に症状が消えていく狭心症や、深夜就寝時を中心に、安静時にも急に胸焼けのような痛みや、胸部の圧迫感を認める狭心症が、これに当たります(これらの場合、水を飲んでも症状が変わらないという点は逆流性食道炎との相違点です)。

以上のように、胸焼けを認めたら、さまざまな病気の可能性があるので、早めの受診をお勧めします。