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むくみの対策(2013年6月24日掲載)

名嘉村博・名嘉村クリニック

水分と塩分 調整必要

水は飲めば飲むだけ体に良いと思っている人が多いようです。むくみの無い人では間違いとはいえません。しかし成人の大部分特に女性は足がむくんでいます。

人体は大部分が水分からなっており新生児では体重の80%、乳幼児70%、成人60%、高齢者50%と年齢により差があります。水分は骨や筋肉とともに体を形作るだけでなく栄養素、老廃物の運搬や新陳代謝、発汗による体温調整の働きをしており生存に不可欠です。水分が不足する脱水症は生命に危険です。

では水分が余った場合はどうでしょうか。水分が余ると体がむくみます。むくみは医学用語では浮腫(ふしゅ)と言いますが成人では3ないし4リットル以上水分が余ると出現します。むくみは足や目の周りのはれ、指輪や靴が入りづらくなるなどでわかりますが軽症例では意外と気づいてないこともあります。足のすね(前脛骨(けいこつ)部)を2本の指で数秒軽く押さえてへこみその戻り具合が悪ければむくみです。足のむくみは重力の関係で夕方に顕著ですが寝ると下側の背中に水分が移動し軽減します。

むくみは(1)心臓、腎臓、肝臓、甲状腺などの病気がある程度以上進行する、(2)栄養不足やネフローゼ症候群、腸管からタンパク質が漏れるような病気で血液の中のタンパク質が不足する、(3)静脈瘤(りゅう)や静脈で血が固まる血栓症−などで出現します。意外と知られていないのですがいびきや夜間息が止まる睡眠時無呼吸症候群でもむくみが出現します。特発性浮腫と呼ばれる原因不明のむくみもあります。発赤や熱感がある皮膚や皮下の感染症やリンパ浮腫は原因と対策が異なります。むくみは倦怠(けんたい)感、だるさ、夜間頻尿、呼吸困難などを起こします。夜間頻尿は不眠の原因にもなります。

むくみは原因疾患があればまずその治療をします。共通している対策は水分と塩分の制限です。塩分が多いと浸透圧を一定にするために水分を体に保持します。通常成人では1日飲料水(水、お茶、みそ汁など)1200ミリリットル、食物の水分1000ミリリットル、食物の酸化で発生する水分300ミリリットルの水分を摂取し、尿・糞便(ふんべん)1500ミリリットル、汗500ミリリットル、呼吸500ミリリットルを排出しています。水を含む全飲水量は1日1・5リットル程度でよいことになります。脱水状態以外では水を余計に飲んだからといって血液が必要以上に“さらさら”になるわけではありません。むくみのある人の脱水症や熱中症対策は屋内や野外の気温・環境を考慮しつつ、食欲、睡眠状態などの全身状態とむくみの程度をみて水分摂取量を調整する必要があります。