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ストレスと病いと心療内科(2013年6月10日掲載)

原信一郎・沖縄セントラル病院

柔軟で適切な対処を

現代社会は、ストレス社会とも言われており、ストレスが関与する“からだ”と“こころ”の病気をたくさん生み出しているようです。

私たちは、気象の変動、大気汚染、病原微生物など身体的なストレッサーに加えて、国内外からの多様な情報、職場や学校、家庭、地域における人間関係の不和・もつれ合いなどの心理社会的ストレッサーに曝(さら)された生活をしています。このようなストレッサーに対して適切に受けとめることができず、効果的な対処ができなければ私たちの心身は悲鳴をあげ、ストレスが関与する病気になってしまいます。本来私たちに備わっている自律神経系・内分泌系・免疫系の働きが損なわれて、心身両面の健康を維持しようとすることができなくなってしまうからです。

心療内科とは、その発症と経過にこのようなストレスが関与している“心身症”や“心身医学的アプローチが必要な病気”を診断し治療をする診療科のことを言います。内科領域だけでなく外科、婦人科、皮膚科、精神科などの領域にわたるこれらの病気に悩まれ苦しまれておられる方々の治療を行います。具体的な病気は表を参照してください。

“心身症”について少し述べてみたいと思います。心身症とは「からだの病気の中でその発症と経過に心理社会的因子が密接に関与し、器質的ないし機能的障害が認められる病態」と定義されています。心理社会的因子とは、ストレスのことです。ストレスが臓器を損傷したり働きを失わせたりするということです。したがってその治療は、心身両面からのアプローチが必要になってきます。そのような治療を進めると「からだだけの治療」「こころだけの治療」という一面的な治療では予想もつかないほどの効果が得られます。

“心身医学的なアプローチが必要な病気”についても同様です。

ところで大切なことは、そのような病気になられたからといって「ストレスに弱い、ダメな人間」だと自分を責めたりしないことです。自分の病気の成り立ちを振り返り、ストレスの受けとめかた、感情や欲求の持ち方などに“気づき”、柔軟で適切な対処行動がとれるようになれると病気は必ずよくなります。そして、ひとまわり成長した自分を実感できます。なぜなら病気は自分を成長させていけるチャンスになりうるからです。