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小児の脱水と水中毒(2013年6月3日掲載)

伊佐真之・県立北部病院

十分な水・電解質必要

1 小児が脱水に成りやすい理由

赤ちゃんや歩き始めの乳児を触ると、しっとりとして艶があり、プニプニと弾力性に富んでいて非常に気持ちがいいです。大人に比べて体内の水分量が多いためです。多ければ、脱水にはなりにくいのでは? と思うかもしれませんがそうではありません。小児は身長を伸ばすため、体重を増やすために多くのエネルギーを必要とします。この時にたくさんの水が必要となります。

大人の場合、体重1キロ当たり1日40ミリリットルの水が必要ですが、乳児の場合には体重1キロあたり1日100〜150ミリリットルで、なんと3〜4倍の水分が必要です。ところが小児の体は大人ほど水分を保持する機能が優れていません。汗、尿などから多くの水分が失われます。怖いのは胃腸炎です。下痢、嘔吐(おうと)などで水分が取れない、飲んでもすぐに吐き出す、下痢として体外にでていくと簡単に脱水になります。

2 脱水の治療で水中毒!

ところで「水中毒」という病気をご存じでしょうか。耳慣れない言葉だと思いますが、「水分の過剰摂取により、低ナトリウム血症を起こした状態」です。人間の体にはたくさんの水分が必要ですが、水分と同時に適切な濃度の電解質(ナトリウムやカリウムなど)が必要なのです。

小児の下痢症、嘔吐症などで脱水の予防や治療として水分の補給はとても大切なことです。ですが水分の補給だけでは不十分です。子供が激しい下痢を起こしている場合、水分の補給のためにお茶や水を飲ませるだけでは電解質の補充が不十分で、水中毒になることがあります。いえ、水やお茶だけでなく、電解質を含んでいる市販のスポーツドリンクも、電解質濃度が低いために水中毒を起こすことがあります。

3 経口補水液

このような問題を防ぐため、現在日本では「OS−1」(オーエスワン〓)という経口補水液が販売されています。この液の組成は米国小児科学会の指針に基づいていて、厚生労働省の認可が下りている個別評価型病者用食品です。ナトリウム濃度が市販のスポーツドリンクのおよそ2〜4倍となっていて、水中毒の心配がありません。「OS−1」は薬局や病院の売店などで販売されていますが、自宅でも作ることができます。

水1リットル+塩3グラム(小さじ2分の1杯)+砂糖40グラム(大さじ4と2分の1杯)+レモン汁適量

冷やした方が飲みやすいです。ぜひ試してみてください。