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見逃されている間質性肺炎長引く空咳(2013年4月29日掲載)

玉寄真紀・琉球大学付属病院

重症化も

皆さんは、間質(かんしつ)性肺炎をご存じですか? 肺炎というと「抗生物質で治療する細菌が原因の病気」を思い浮かべるでしょうが、それとは別です。聞きなれない病気でしょうが、かの美空ひばりもこの病気だったようです。

酸素を体に取り込む肺は、柔らかいスポンジのようになっており、細かく枝分かれをして最後は肺胞(はいほう)という、ブドウの房のような形になります。酸素は、肺胞の壁を通して血管に取り込まれ、体全体に運ばれます。肺胞の周りの炎症により、肺胞の壁が厚くなって酸素の取り込みが悪くなったり、肺が硬くなって膨らみが悪くなる病気が、間質性肺炎です。

原因にはリウマチといった膠原(こうげん)病、漢方や健康食品を含む薬剤、粉塵(ふんじん)や埃(ほこり)や有害物質の吸い込み、たばこなどがあり、最近は九州や沖縄に多いウイルス(HTLV−1)も発症に関わることや、一部に遺伝があることも分かってきました。これらの原因が無い場合は特発(とくはつ)性間質性肺炎と呼ばれます。

進行度は、原因やタイプによってさまざまです。無症状や軽症で数年以上問題なく過ごせることも多いですが、突然急激に悪化することがあり、これを急性増悪(ぞうあく)と言います。特発性間質性肺炎は発病から5年で約30%の方が亡くなるとされ、厚生労働省が定める難病の一つに該当します。

症状は長引く空咳(からぜき)(痰(たん)を伴わない咳)で、進行すると動く時の息切れが出始めます。急性増悪では、熱や強い呼吸困難を伴うこともあります。肺の聴診・レントゲンやCT・呼吸機能検査・血液検査などにより、診断されます。さらに、原因やタイプを確認するために、気管支鏡や肺の陰影の部分を一部採って顕微鏡で確認する病理検査を追加する場合もあります。

主な合併症には、肺がんがあります。診断されても、全例が治療されるわけではありません。治療の必要性は、原因やタイプ、そして症状・低酸素・肺の陰影の強さや進行度などを総合的に判断し決定します。無症状や慢性に経過する方は、無治療または咳止め・在宅酸素療法などの対症療法で経過観察します。薬剤を用いる場合は、副作用に注意しながらステロイドや免疫抑制剤などを投与します。また、特発性間質性肺炎の一部では、適応は限られますが、数年前から新しい治療薬も使われるようになりました。難治性では、肺移植が考慮される例もあります。

症状が出る前から肺に影が見られ、健診が診断のきっかけになることも多いので、ぜひ受けることをお勧めします。認知度が低い病気ですが、適切な診断や方針決定が必要です。気になる方は、ぜひ呼吸器内科へご相談ください。