年度末3月1日の沖縄タイムスの1面はわれわれ医療従事者のみならず、沖縄県民にとってとても残念な話題でした。沖縄県は世界に誇る長寿の島として長年日本一(女性)として君臨してまいりましたが、2012年度の平均寿命は女性が全国第3位、男性に至っては30位にまで後退してしまいました。背景には恐らく、食の多様化、食の欧米化が原因の一端を担っているのではないかと考えます。
さて乳がんの罹患(りかん)、死亡に関してはいかがでしょうか? 沖縄県の乳がん死亡率、罹患率ともに上昇傾向にあり、10年度の乳がん死亡率は全国ワースト2位、罹患率も今や16人に1人が乳がんになる時代で、今なおその数は増えつつあります。沖縄県の乳がんの罹患率・死亡率に関しても平均寿命同様、食の欧米化との因果関係が強く示唆されます。過去の疫学研究において閉経後女性の脂肪摂取の増加・肥満・体重増加が乳がんのリスクを増加させる可能性があるということが知られています。
また、同じ日本人であっても、日本在住の日本人とハワイ在住の日本人、さらにアメリカ本土在住の日本人とでは乳がん罹患率に大きな差があり、このデータからも環境因子が乳がん発症リスクの一端を担っていることが示唆されます。もともと肥満遺伝子を有しない女性が欧米型の食生活により肥満になることは、乳がん発症の観点から非常に危険であると考えられるわけであります。
1960年代、本土よりも10年早くファストフードが沖縄で展開され、米軍基地も多く抱える中で、American Life Styleが違和感なく沖縄の伝統文化に浸透しているような印象があります。シーミーでフライドチキンが出てくることに疑問を感じず、ポークの入っているおにぎりを好んで食べておりますが、体に悪いんだろうなあと思いつつも、幼少期から食べなれている味、なかなかやめられないものです。乳がん発症の観点のみならず、生活習慣病の観点から、これらのAmerican Styleの食事を多少控えて、琉球古来の伝統料理をいま一度見直してみる必要があるのかもしれません。
さらに体を動かすことも強く推奨したいと思います。運動は乳がんのリスクを減少させる、このことは特に閉経後女性においては紛れもない事実であります。規則正しく、栄養バランスの良い食生活と適度な運動により生活習慣病と乳がん発症のリスクを下げ、いま一度長寿の島を目指して頑張りましょう。