沖縄県医師会 > 健康の話 > 命ぐすい・耳ぐすい > 命ぐすい・耳ぐすい2013年掲載分 > 緩和ケアって何?

緩和ケアって何?(2013年3月11日掲載)

金城実男・南部病院

苦痛なく穏やかに

皆さんは「緩和ケア」って知っていますか? 近い将来日本人の2人に1人ががんで亡くなると言われているように、今後ますますがんが身近な存在となってきます。これからはがんと向き合うために大切な緩和ケアについての知識を持っておくことが必要となります。緩和ケアを正しく理解し、緩和ケアを受ける勇気を持ってほしいと思います。

緩和ケアとはがんを抱えた患者さんが最期まで自分らしく生き抜くための医療です。がんによって引き起こされた痛みや息苦しさ、腹水(おなかにたまった水)によるおなかの張り、だるさなどのつらい症状を取り除くのはもちろんのこと、心のつらさや社会的・経済的な悩みもサポートするために多職種(医師、看護師、薬剤師、栄養士、心理士、理学療法士、ソーシャルワーカーなど)で関わり、心も体も穏やかに過ごせるようにお手伝いしていくチーム医療です。がんと診断された早期から始まるもので、決してがんの終末期のものではありません。しかし緩和ケアをためらう人もいて、その理由のひとつが医療用麻薬に対する抵抗感です。

医療用麻薬に対して「麻薬を使うと中毒になる」「いつか効かなくなる」「寿命が縮む」などの誤解をよく耳にします。しかし医師の指導の下に適切に使用すれば中毒となる確率は非常にまれで(0・2%以下)、痛みがある状態で医療用麻薬を使用した場合には薬物依存もおこらないとされています。

さらに、医療用麻薬の使用も含めて早い段階から緩和ケアをうけた患者は、寿命が縮まるどころか逆に延長したとする報告もあります。実は医療用麻薬は意外と安全で、得られるメリットの方が大きいのです。慎重になるのはよいことですが、石橋をたたきすぎて壊してしまわないように、主治医の指示に従い安心して使用してください。

また、がんの終末期にどこで療養するか決めておくことも非常に大切な問題です。

ホスピス・緩和ケア病棟を知っていますか? 緩和ケアを専門的に行い、心や体の苦痛なく穏やかに過ごすための専門病棟です。県内には4施設ありますが、入院を希望する場合には面談と入院判定が必須となるため、実際の入院までには数週の期間を要することがあります。体調が悪いときでもすぐに入院できないこともあり、終末期を緩和ケア専門病棟で落ち着いて療養したいと希望される場合は、先のことを見据えて療養場所についても早めに主治医と相談しておくことをお勧めします。