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一刻を争うアナフィラキシー(2013年3月4日掲載)

井上比奈・沖縄赤十字病院

自己注射で救急処置

アナフィラキシーという言葉をご存じですか? 文献によれば紀元前27世紀ごろにエジプトの初代の王メネスが蜂に刺されて亡くなったとの記述があり、これが人類最古のアナフィラキシーの記録ではないかといわれています。

アナフィラキシーとは急性の全身性の重篤な1型(即時型)アレルギー反応で、全身の痒(かゆ)み、浮腫、嘔吐(おうと)、下痢、呼吸困難、難聴、血圧低下、ひどいときには意識障害をおこし救急車で来られる患者様もおられます。こういった病態はアレルゲンの経口摂取や注射、皮膚からの吸収や吸入により引き起こされます。蜂刺傷だけでなく食物や薬物でもおこります。沖縄では海洋生物刺傷(オニダルマオコゼやオニヒトデ)やハブなどで命を落とす方もおられます。また、光線や運動、温度によってもアレルギーが起こることが知られており、ある特定の食べ物を食べて運動することによっておこるものは食物依存性運動誘発アナフィラキシーと呼ばれています。

アナフィラキシーは一度起こってしまうと一刻を争う事態になります。原因物質がわかっている場合にはアレルゲンに近づかない(接取しない、防護具を使用する)など予防が大切です。起こってしまったら、アレルギーを除去する(水で洗い流すなど)の他、以前に紹介されたことがありますが、ペン型のアドレナリン自己注射(エピペン(R))が医療機関での手当てを受けるまでの救急処置として有用です。2011年9月には保険適応となり、処方が増加しています。使用方法は、ペンの安全キャップをとって太ももの前外側に数秒間押し付けるだけで必要な量のアドレナリンが筋肉注射されるように設計されています。緊急の場合は衣服の上からでも注射できます。

エピペン(R)は基本、自分で打つ注射ですが、学校や保育園などで児童がエピペン(R)を所持していても年齢が若いため、あるいは症状が強くて本人が自己注射できない事態には保護者に代わって教員や保育士など周りにいる人が、自宅などであれば保護者が、救急車が到着すれば救急救命士が使用してよいこととなっています。今年2月には国頭消防本部と協同で厚生労働省のガイドラインに基づいた実習を行いました。

アドレナリンは実際、心臓が止まった時にも使われる劇薬です。登録を受けた医師が処方でき、いざというときのために練習できるようにトレーナーも一緒に処方されますので継続的に練習することもできます。ひどいアレルギーをお持ちの方は医療機関にご相談ください。