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副腎のホルモン分泌(2013年2月25日掲載)

向山秀樹・南部徳洲会病院

過剰分泌は病気の原因

みなさん、副腎という臓器をご存じでしょうか? 腎臓は知っていても副腎は知らない方も多いと思います。名前のとおり腎臓のそばにある(副える)臓器なのですが、その役割は腎臓とはまったく異なります。腎臓の主な仕事が尿を産生し、体の老廃物を排出するのに対して、副腎はホルモンを分泌するのが仕事です。

どのようなホルモンを分泌するかというと、興奮したときに分泌されるアドレナリン、ノルアドレナリンといったホルモンや、体の炎症や抵抗力などを調整するステロイド、また血圧を上昇させるアルドステロンといった、さまざまなホルモンを分泌しています。

副腎は本来、このようなホルモンを分泌して体の恒常性を保つ働きをしているのですが、時として過剰にホルモンを分泌してしまい病気を引き起こす場合があります。

病気は、過剰に分泌してしまうホルモンの種類によって、それぞれ病名がついており、アドレナリン、ノルアドレナリンを過剰に分泌する場合は褐色細胞腫、ステロイドを過剰に分泌する場合はクッシング症候群、アルドステロンを過剰に分泌する場合は原発性アルドステロン症と呼ばれています。

症状としては、おのおのの病態に応じて血圧が上昇したり、中心性肥満と呼ばれる手足よりもおなかに脂肪がつく太り方をしたりします。

検査方法ですが通常は最初に血液検査でホルモンの異常分泌がないかの検査を行い、加えてCT、MRIといった画像検査。ついで必要に応じてエックス線検査のひとつであるシンチグラムや、負荷試験、選択的腎静脈採血などといった込み入った検査が施行される場合もあります。

他の病気や検診でCT、MRI、腹部超音波検査等が行われた場合に偶然発見される場合も少なくありません。このような場合は偶発副腎腫瘍と呼ばれます。

これら副腎疾患の治療方法は原則的に、ホルモンを過剰に分泌している副腎の摘出が行われています。ちなみに副腎は腎臓と同じで左右に1個ずつ計2個ありますので、1個を摘出しても通常は問題ありません。

摘出方法としては、以前は背中からわき腹にかけておなかを切る開腹手術が主に行われていましたが、現在では手術技術の進歩により、内視鏡を用いた腹腔(ふくくう)鏡手術が普及しています。そのため手術による体への侵襲も抑えられ、傷も小さく、入院期間も短くてすむようになりました。

みなさんに副腎とその病気について、ご理解いただければ幸いです。