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大事にしたい血管内皮(2012年12月31日掲載)

真榮平 直也・牧港中央病院

生活習慣見直し長寿に

「人は血管と共に老いる」という言葉をご存じですか? 血管の老化は脳・心血管病そして認知症にもつながります。逆に血管を若く保つ事でアンチエイジングや長寿も期待できますが、それにはどうすれば良いのでしょう?

脳や心臓に血液を送る動脈の内側(血液と接する部分)には、薄い壁紙のような「内皮(ないひ)」がはっています。驚くべき事にこれがただの壁紙ではなく、血中のコレステロールが血管の壁に侵入するのを防ぐバリアー機能、血管を収縮・拡張し血流を調節する機能、血管をふさぐ恐ろしい血栓をできにくくする機能といった動脈硬化を防ぐ上で重要な働きを担っています。子供や若者に心筋梗塞や脳梗塞が起こらないのはこの内皮が十分機能しているおかげです。

しかし生まれながらに授かったこの宝物も、われわれがいたわらないと徐々に傷み、機能しなくなります。

内皮の主な敵は高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、喫煙などの生活習慣病です。これらは全て内皮をズタズタに傷つけ、そこから動脈硬化が始まります。初期の動脈硬化の段階までは痛くも痒(かゆ)くもないので、生活習慣病という数字の異常は放置されがちです。しかしここで手を打たないと動脈硬化が進行し、脳卒中や心筋梗塞など取り返しのつかない事になります。そうならないためにも症状の無い段階で自分の内皮を自分で守るという意識を持つ事が重要です。具体的には、

 (1)内皮を守るために生活習慣を見直しましょう。食事はバランス良く量も適切ですか? ファストフードを摂りすぎていませんか? 1日30分のウオーキングを続けていますか?

 (2)(特定)健診は必ず受け、内皮を脅かす生活習慣病のチェックをしてください。生活習慣病であれば、指示に従って生活指導や治療を受けましょう。

 (3)治療と並行してあなたの内皮(血管)の傷み具合を評価してもらう事もお勧めします。多くの総合病院や循環器科の病院では各種血管エコー、CT、ABI(足の動脈の検査)等痛みを伴わない検査を受ける事ができます。これらの検査は動脈硬化の過程におけるあなたの立ち位置を教えてくれ、病気の早期発見や治療継続のモチベーションの維持に有用です。

長寿県沖縄の復活のカギは、「ウチナーンチュの血管内皮を守る」事にあります。そしてそれを守るのは他でもないわれわれ自身です。われわれは血管内皮という素晴らしい宝物を授かっている事に感謝し、それをいたわり守るよう行動を起こす事で健やかに長寿を全うしようではありませんか!