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沖縄のエイズ診療の実態(2012年12月17日掲載)

健山 正男・琉球大学医学部附属病院

10万人あたり患者数1位

最新のエイズ発生動向年報(2011年度・厚生労働省)によりますと人口10万人あたりのエイズ患者数は、沖縄県は東京都や大阪府などの大都市を抜いて全国1位になったことが発表されました。今年の当院の新規患者数は、年末まで2カ月を残す10月時点で既に昨年度の患者数を上回っており、増加の勢いは止まりそうにもありません。

沖縄県のエイズ患者の特徴は、東京都などの大都市と異なり、病気が進んだ状態で診断される割合が高いことです。ひとたびエイズを発症すれば自然治癒はなく、早期に適切な治療を行わなければ多くの方が亡くなるのも現実です。

早期に診断されることのメリットは、仕事や学業を入院などで中断することなく外来での診療が可能です。治療方法が飛躍的に発達しているので、薬も1日1回服用することが主流となっており、薬をしっかり飲み続ければ、感染していない人と遜色のない寿命を全うすることも可能です。また、母子感染や他者への感染を防ぐことができます。

診断が遅れるとこれらとは真逆に、長期入院と他者への感染を招くことになりますので、検査を受けないことのメリットは長年、エイズ診療する経験から私は思いつきません。

どのような人がエイズ検査を受けるべきかは、よく質問されますが、早期発見を考えると「性交渉の経験があれば、一度は検査を受けてはいかがでしょう」と答えるようにしています。

実際に米国では、どんな病気でも医療機関を受診した13〜64歳の患者には、患者が断らない限りHIV検査を勧めており、既に国民の4割近くが検査を受けています。実に日本の受検率の100倍以上です。

日本は米国よりも感染者が少ないのに病気の重いエイズ患者の割合が高いのも受検率が低いことによるかもしれません。私も病気の進んだエイズ患者の多い沖縄県では、他県に先行して取り組むべき段階にきたのではと思っております。

もしエイズ検査で感染が判明した場合に多くの方が抱く不安があります。まず心配される医療費ですがエイズ診療では国からの助成制度があり、ソーシャル・ワーカーが個別の事情を考慮して対応してくれます。いまだ社会的偏見が心配される病気のために精神的な不安も大きいと思いますが、スタッフやHIV専門の臨床心理士が心のサポートを行っています。

検査は短時間で判明する迅速診断検査を県内各保健所が無料で受け付けていますのでお問い合わせください。